【建築週間】日本建築家協会近畿支部が連続イベント 関西建築家大賞歴代受賞者や作品をPR | 建設通信新聞Digital

5月1日 水曜日

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【建築週間】日本建築家協会近畿支部が連続イベント 関西建築家大賞歴代受賞者や作品をPR

 日本建築家協会近畿支部(JIA近畿、井上久実支部長)は、10月25日から11月4日までの10日間を「建築週間」と銘打ち、大阪市の本町ガーデンシティエントランスホールで連続イベントを開催した。テーマに据えたのは「建築家の顕彰」。作品パネルの展示やトークショーを通じて顕彰を受けた建築家や作品を市民に広くPRした。

歴代受賞者のパネルを展示

 イベントでは、関西建築家大賞と関西建築家新人賞の歴代受賞作品、2019年度卒業設計コンクールの入賞作品をパネルや模型で紹介した。
 また、10月25日には、建築家大賞の第1回受賞者である出江寛氏と第3回受賞者の坂茂氏のトークショー、同30日には第15回建築家大賞を受賞した大江一夫氏と審査員を務めた古谷誠章早稲田大教授の対談も開いた。

 建築家の顕彰を市民にPRすることの意味について井上支部長は「関西建築家大賞と関西建築家新人賞はJIAの会員しか応募できない。だからといって、広報を会の中だけにとどめるのはもったいない。優れた建築家がつくる作品は必ず街や社会に影響を与える。そのことを一般の方にも知っていただきたい一心で今回企画した」と話す。

井上 久実氏

 16年度に支部長に就任した井上支部長は、当初から「一般社会のみならず、JIA内部に対しても情報発信が行き届いていない」ことを危惧(きぐ)していた。初年度には支部内に基本政策諮問会議を設置。「建築家を議論する」「建築家を広報する」「建築家をサポートする」「建築家を顕彰する」を運営の柱に据える答申書を作成した。
 井上支部長は「賞はいつも『もっとステップアップしたい』という感情を呼び起こしてくれる。顕彰には建築家を奮起させる力がある。そして、顕彰によって奮い立たされた建築家が良い作品をつくり、それが社会に良い影響を与える。建築家を顕彰することが最終的には社会貢献につながる。このサイクルをつくるのがJIAの役目だ」と話す。

坂 茂氏

 25日のトークショーで坂氏は「建築家大賞の受賞をきっかけに、建築家としてやっていく自信を持つことができた」と話した。審査対象となったのは阪神・淡路大震災で全壊した鷹取教会(神戸市)を紙で再生した「紙の教会」と、同教会に身を寄せていたベトナム難民向けの仮設住宅「紙のログハウス」など。「建築の社会に及ぼす影響、力に疑問を感じていたころで、ルワンダで難民救済活動に取り組んでいた。この受賞がいまの活動にもつながっている」と振り返った。

 関西建築家大賞は一人の建築家が審査員を務め、一人の建築家を選出する。井上支部長は「顕彰は審査員によって左右されるもの。審査員の色によって結果は大きく変わる。だからこそ、歴代受賞者がバラエティーに富み、多様性を生んでいる」という。
 25日のトークショーで出江氏は「審査員には作品の背景に何があるか哲学を持って読み取る能力が必要だ。建築家の顕彰は審査員が試される、審査されるようなもの」と話した。

出江 寛氏

古谷 誠章氏

 また、30日の対談で古谷教授は「大江さんの作品は審査した2つも、そのほかの作品群もどれとして似通ったものはなく、どの作品も水準以上のクオリティーを保っている。そしていずれもが自分が生活する地元の物件であることは本当に素晴らしい」と称賛。大江氏は「受賞によって自分のやってきたことが認められたようで、うれしく思う。これからもそのスタンスは変えず、さらに磨きをかけていきたい」と喜びを語った。

大江 一夫氏

 井上支部長は「今回、一般の方にどれだけの印象を与えることができたか分からないが、続けていかなければ」と、継続の大切さを語る。「次回からは新人賞を取った若手が中心となって引っ張っていってくれる。どんなかたちでもいい。建築家は表に出て、知ってもらうことが重要だ」

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