【建コン協】「インフラ整備70年講演会-戦後の代表的な100プロジェクト」で青函トンネルを語る | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【建コン協】「インフラ整備70年講演会-戦後の代表的な100プロジェクト」で青函トンネルを語る

 建設コンサルタンツ協会は、東京都港区の政策研究大学院大学で連続講演会「インフラ整備70年講演会-戦後の代表的な100プロジェクト」の16回目となる「北海道と本州を繋ぐ世界最長の海底トンネル-新たな技術で困難を克服した青函トンネルの建設-」を開いた。海水起源による高圧水というそれまで経験したことのない環境下での未知への挑戦となった青函トンネル。わが国のトンネル建設史に大きな功績を残し、以降のトンネル計画に勇気を与えたプロジェクトについて語り合った。
 冒頭、清水英範東大教授が「青函トンネル建設は、大変ドラマチックな事業であり、日本の中で最も野心的な取り組みだったと確信している」とあいさつした。
 講演では、青函トンネルの現場を経験した元鉄道建設・運輸施設整備支援機構副理事長の土谷幸彦氏が開発の経緯とコンセプトについて説明。服部修一同参与は幾多の困難を乗り越えた施工の工夫などを詳しく紹介した。朝倉俊弘京大名誉教授は「青函以降」の開発に触れながら、現在も健全な状態を保っている青函トンネルの今日的な意義を改めて強調した。
 この中で土谷氏は、トンネル建設の機運を高めた理由を「台風15号により犠牲者1430人を出した日本海難至上最大の洞爺丸事故(1954年)だった。それまで本州から北海道は船で渡っていたが、安全な交通路の要望が高まった」と指摘し、「トンネルの掘削実現可能性を探る調査が始まった」と当時の時代背景を語った。
 さらに、トンネル建設の課題として、両側の斜坑口から片押し12㎞の掘削、水深140m、海底下100mの海底部工事の出水事故回避、使用材料や各種設備の腐食劣化への対処を挙げた。
 課題を克服できた要因を、斜坑・先進導坑・作業坑の連携と多切羽での本坑掘削、先進ボーリング、地盤注入、吹付コンクリートの施工技術の確立、耐海水性コンクリートと漏水防止工の実用化などを挙げ、「緻密な施工計画と技術開発で克服した」(土谷氏)。
 服部氏は青函トンネル建設で開発した新技術の数々を解説。地形地質調査から設計施工、環境対策のための排水処理に至るまでさまざまな技術が開発され、日本に初めて導入された技術として「乾式による吹付コンクリート」を紹介した。
 朝倉氏は青函トンネルの意義について「有史以来のトンネル建設技術の蓄積や各種技術開発で、超長大・海底下・難地質条件を克服し完成した。以降の難条件のトンネル計画に勇気を与えた功績は非常に大きい」と強調し、「53㎞の本坑構造物が現在も健全な状態であることは画期的だ」と語った。

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