【郊外の新たな価値創出】多摩田園都市の意義と可能性探る 「インフラ整備70年講演会」開催 | 建設通信新聞Digital

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【郊外の新たな価値創出】多摩田園都市の意義と可能性探る 「インフラ整備70年講演会」開催

 建設コンサルタンツ協会(高野登会長)は10日、連続講演会「インフラ整備70年講演会-戦後の代表的な100プロジェクト」の第18回となる「田園都市を創る!-一民間企業が担う世界最大TOD」をオンライン方式で開いた。民間最大級のTOD(公共交通指向型開発)として、東急グループが東京南西部の5000haにおよぶ広範なエリアで取り組む多摩田園都市の特徴や今日的な意義をさまざまな角度から論じるとともに、コロナ禍によるパラダイムシフトが進む中で“郊外都市”の新たな可能性を探った。

 講演では、太田雅文東急総合研究所主席研究員のリードのもと、東急の高橋俊之取締役 兼常務執行役員が「多摩田園都市の開発・運営」、東急電鉄の城石文明取締役 副社長が「鉄道・交通インフラ整備・運営(田園都市線・新玉川線の建設)」、東急沿線開発事業部 の泉亜紀子次世代郊外まちづくり担当課長が「持続可能な郊外まちづくり」について、それぞれ説明した。

 この中で高橋氏は、「“沿線”という概念とともに、地域価値の向上が企業価値の向上に直結するという考え方を持って都市開発と鉄道建設を一体的に並行して推進し、人間の豊かさに着目したまちづくりの根幹は変えずに、時代ごとのニーズを先取りして取り組んできた」ことを特徴に挙げ、それが「一人ひとりのライフスタイルに合わせた、すべての人が満足できる最適なサービスを提供するシティー・アズ・ア・サービスという今日の目標につながっている」と語った。

 城石氏も幾多の困難を乗り越え、社会環境や利用者ニーズの変化に対応しながらも将来を見据えた鉄道の整備・運営に取り組んできた先人たちの「先見の明」に謝意を示しつつ、「コロナ禍によって都心に通わない働き方が既に定着しつつある。まさに価値破壊が起きた。これは郊外に新たな価値を提供するチャンスでもあり、事業構造改革の先にあるのが新たな鉄道サービスだ」と見据えた。

 泉氏は、たまプラーザでの産学公民の連携による次世代郊外まちづくりの具体的な取り組み事例と将来に向けたビジョンを詳しく紹介した。

 これを踏まえて、政策研究大学院大教授で土木学会会長の家田仁氏は「田園都市の起源はE・ハワードが提唱したガーデンシティーだが、ここまでつくったものはオリジナルな“ニッポン田園都市”として世界に打ち出せるものだ」と総括するとともに、今後さらなる飛躍に向けて転換期にあるとも指摘。特にコロナ禍によるテレワークの進展は「郊外居住に新たな価値を創出する」とし、そのためにも「高品質な総合拠点を充実させ、郊外住宅地から郊外都市へ、また郊外が本来有する豊かな自然と風景を回復再生し暮らしの外部的付加価値を増進する。高齢化が進む中で広域化した住宅地を再編成しつつ域内モビリティーを確保する。さらに住宅地を相続劣化させることなく、居住者の世代交代を持続的に進める工夫」が必要だと論じた。



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