【記者座談会】阪神・淡路大震災から四半世紀 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【記者座談会】阪神・淡路大震災から四半世紀

A 17日は阪神・淡路大震災から25年の節目に当たる。
B 1995年1月17日午前5時46分、兵庫県南部を震源とする内陸直下型地震はマグニチュード7.3、最大震度7を記録し神戸市を始め関西一円で強い揺れを引き起こした。地震が少ないと言われていた関西で起きた未曽有の災害であり、東日本大震災とともにナショナル・レジリエンスの原点になったといえる。
C 国の緊急即応体制や地方公共団体の広域連携、ボランティアや海外からの支援への対応、被害情報の収集・伝達のあり方など多くの問題点が指摘され、この年に2度にわたって災害対策基本法が大幅に改正された。「活断層」という言葉が世の中に広く知られるきっかけになったし、いまや自然災害からの復旧・復興に欠かせない存在となったボランティアが日本社会に根付く契機ともなった。
B 耐震という概念も広く浸透した。ビルが横倒しになり、神戸市役所2号館の1フロアが完全につぶれるといった衝撃的な光景がメディアを通じて全国に流れた。これを契機に耐震改修が広く行われるようになり、免震や制振技術の開発・普及を加速させた。
C 阪神高速3号神戸線の橋脚が長さ635mにわたって倒壊した姿は、当時の土木関係者に大きな衝撃を与えた。その後623日という短期間で全面復旧を実現し、日本の土木技術の高さを改めて内外に印象づけた。
D 復興には市街地再開発や土地区画整理手法が導入され、新しいまちづくりも進んだ。行政関係者だけでなく地元の建築家らも重要な役割を果たしたことは特筆すべきだ。
A その再開発がようやく終わるそうだね。
D 6地区あった再開発で唯一完了していなかった新長田地区について、市は土地買収が進まない1区画を事業対象から外し事業を完了させる方針だ。

阪神・淡路大震災で甚大な被害が発生した神戸市長田区(神戸市阪神・淡路大震災記録写真オープンデータより)

従来にない災害「間に合う」対策を

A 完了を急ぎたい背景が?
B 神戸の「地盤沈下」があると思う。実は市の人口は減少傾向が続き、流出対策としての新たなまちづくりが課題になっている。神戸はブランドイメージこそ高いけれど、京都や大阪ほどインバウンドの恩恵を受けていない。ホテルラッシュが続く京都や万博・IRへの対応を急ぐ大阪と比べ、大規模開発については出遅れた感がぬぐえない。25年を期に震災に区切りをつけ、新たなステージを目指したいという思いがあるのかもしれない。
A 巨大化する自然災害がいかに長期にわたってダメージを与えるかということだね。その意味でも切迫性が高まっている首都直下地震や南海トラフ地震への備えはまさに待ったなしといえる。
E 地震活動や気候変動に伴う異常気象が活発化・常態化する中で、被害を最小化するためには事前復興の取り組み強化が欠かせない。特に日本全体の人口の約3割、GDPでは約4割を占める関東地方の経済被害を軽減するためには、「ヒト・モノ・カネ」の東京一極集中をいかに緩和していくかという、国土そのもののデザインを視座に置きながら、いま取り組むべき対策、言い換えれば巨大災害発生時までに「間に合う」対策を講じていかなければいけない。
F 昨秋の台風19号では国土の3分の1が被災地となった。これほど広範に、かつ同時多発的に甚大な被害が発生するような事態はかつて経験がなく、国の機関であっても対応が追いつかない状況が随所に見られた。従来にない災害に対処するには従来どおりの発想や体制では限界があることは明らかだ。阪神・淡路大震災から四半世紀を経たいま、その経験と教訓を忘れずに、より安全で安心な社会をつくるため、産官学民の総力と英知を結集していくことが必要だ。

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