【「施工のトップガン」を育てる】フクザワコーポレーション社長が語る ICT内製化のメリット | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

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【「施工のトップガン」を育てる】フクザワコーポレーション社長が語る ICT内製化のメリット

 長野県にあるフクザワコーポレーションは、公共土木工事を中心とした建設部門(本店・飯山市)のほか、建設ソフトウエアを手がけるシステム開発部門(本社・長野市)があるのが特徴だ。同社では「ICTを支えるのは優秀な人材」として、積極的な人材採用も続けている。「内製化すればメリットがある」というICT施工について、福澤直樹社長に現在の取り組みや、効果などを聞いた。

 福澤社長が、父が社長を務めていた同社に入社したのは1989年。「仕事はあったがバブル末期で人材は来ない。休日出勤、残業が多かった」と当時を振り返る。紙ベース中心の仕事だったため「非効率で、汗をかけば書類が汚れてしまう。人材が不足していたし、仕事をやりやすくしたかった」と、当時は最新機種で50~60万円程度だったパソコンに積極投資し1人1台の環境を整えた。さらに「システムがないなら自分でつくるしかない。使う人が増えれば、コストも回収できる」とシステム開発へと踏み込んだ。開発専門の人材も積極的に採用し、93年にはシステム開発部門を新設した。最近の自社開発の1つ「除雪管理システム」は、販社を通して既に全国22の自治体で採用されている。

 バックホウやブルドーザーだけではなく、8年ほど前からアスファルトフィニッシャーでICT施工(MC)に取り組んできた。ICT施工は、コスト面も課題となるが、「内製化すれば多大なメリットがある」との見解を示す。レーザースキャナーやドローンによる測量、解析まで内製化している。「内製化しないと逆にコストが高くなってしまう」と語る。

 ICT施工が特に効果を発揮する例として、非線形の形状が多い山間地の圃場整備を挙げる。従来は測量するだけで5、6人の技術者が必要だったが、ICT施工により「現地の丁張り設置が不要となるため、1、2人でできる」という。
 19年10月の台風19号襲来時には、長野市穂保の千曲川破堤現場で「ドローンで撮影しながら、あと何日で終わるか、土量がどれぐらい残っているかなど、主に測量面で活躍した。ICT建機にデータを入れる前に、4日半で終わった」と災害対応でも効果を発揮した。

最新機器を投入し仕事を効率化


 一方で、「ICTを支えるのは優秀な人材」と断言する。同社では着実に採用を続けた結果、現在、社員の7割以上が30代以下となっている。
 「ICTで効率化はできても、常に交代できる人間がいないと社員が休めない」というのが若手を多く採用する理由だ。「会社の収益性を下げてでも多くの人材を抱えないと、現場が止まるだけでなく、せっかく育てた若い人材が辞めてしまう」とも話す。
 また、「建機はお金を出せば買えるが、優秀な人材はお金では買えない。企業や社員に魅力がないと優秀な人材は来てくれない。優秀な社員や、良い職場環境が次の優秀な社員を呼び込む」と強調する。

 若手社員の技術習得と、優れた技能継承のために始めた、バックホウ操作、型枠組立の社内独自の検定は、長野県から技能評価認定を受けた。これらの取り組みなどにより、長野県の優良技術者表彰制度では、制度開始から16年連続で42人が受賞し、ことしで3年連続、一般の部、若手の部、両部門で受賞者代表に選ばれた。

 「ICTは効率化が中心で施工の主体ではない。当社では『施工のトップガン』を育て続けることが最も重要」と語った。

 今後は、「現在のデータを入力して、書類作成、測量、建機を操作するための単なるICT施工から、集めたデータを解析し、自動化する方向にシフトしていきたい」と見据える。「IoT(モノのインターネット)の発達などによりデータを集めやすい時代に変わってきた。ビッグデータを解析しやすくなった」と語る。建機や人間にセンサーをつけて、データを収集し、AI(人工知能)で解析することで、「優秀な作業や歩掛りデータの取得も自動ででき、収益も把握できるようになるのが次の段階。そこからスムーズな自動運転やロボット化への道筋が見えてくるはず」と、将来像を思い描く。

アスファルトフィニッシャーでICT施工(MC)

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