【女性が活躍できる現場環境を整備】ゼムケンサービスが実践 女性リーダーを育てる取組とは | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【女性が活躍できる現場環境を整備】ゼムケンサービスが実践 女性リーダーを育てる取組とは

 ゼムケンサービスは、多能工の育成やワークシェアリングなど、女性が現場で活躍できる雇用環境を整備した。2014年経済産業省「ダイバーシティ経営企業100選」、15年内閣府「第1回女性が輝く先進企業内閣府特命担当大臣賞」、16年「第9回ワークライフバランス大賞奨励賞」などを受賞するなど、その取り組みは高く評価され、女性活躍推進の先進企業として注目されている。社内だけにとどまらず、19年度には女性リーダー育成のための「けんちくけんせつ女学校」も開校した。

籠田淳子代表


 同社は北九州市に密着した工務店で、「建築は統合芸術」を理念に、企画・デザイン・設計・施工まで建築プロセスを一貫して手掛ける。籠田淳子代表は父が営んでいた会社を20年ほど前に引き継いだ。大工で棟梁だった父や住み込みの職人に多くを学び、「図面どおり以上を現場はつくることができる」と現場を尊重し、「社員全員が現場に立つ」ことに強いこだわりを持つ。

 社員は8人で、うち7人が女性だ。「わたしが女性だから顧客も安心していろいろな話をしてくれて、これまでにない提案ができた」といった自身の経験から、女性を積極的に採用し、強みであるコミュニケーション能力や生活者視点を取り込む。
 しかし、家庭内の仕事が男性より圧倒的に多いのも現代社会における女性の現実だ。籠田代表は、経営者としての激務をこなしながら妻・母として家庭を支えてきた。自身の経験を生かし、「建設業を好きだという女性が建設業を一生の仕事にする」ことができるビジネスモデルを提案・実践している。

 1現場を複数社員が担当するワークシェアリングは、子育て中の2人を対象に2006年にスタート。以降、裁量労働制を採用し、「独身」と「子育て中」などといった組み合わせにより継続実施している。子育てに重きを置く社員は朝9時から4時30分まで、週休3日で勤務している。「ハードルを下げれば勤務が可能という女性がたくさんいる」と、働き方を自分でデザインできる環境だ。

 現場マネジメントにも柔軟に対応している。例えば、建設業が重きを置く朝礼。早朝の勤務を強いる朝礼があるため現場勤務ができない女性も多い。そこで、昼礼に変え、インターネットによる確認だけでも可能とした。
 これらの取り組みが「時間のシェア」であれば、「能力のシェア」にも工夫がある。現場代理人が行う近隣住民へのあいさつ、施工図作成、積算見積もりなどの業務を39に細分化し、それに対する社員の能力を◎、○、△と自己・他者評価を行う。

 社員はベテランから若手まで、能力も得意不得意とさまざまだ。自分の能力に見合った仕事が割り振られる「ダイナミックシェアリング」により、チームとして現場管理する。業務と能力の「見える化」は、キャリアパスとして分かりやすく、モチベーションの向上にもつながっているという。

 「社員が育てば会社も育つ」が籠田代表の信条だ。1人当たりの売り上げは業界平均を超え、「男女に関係なく活躍できることを証明できた」と胸を張る。さらに、「生まれ育った地域の生活基盤を守ってほしい」という思いから、社員にはいずれ起業・独立するよう促し経営に関する教育も行う。

 人材育成は社内にとどまらず、建設業で頑張る女性たちにも向けられる。国土交通省建設リカレント教育等支援事業となる「けんちくけんせつ女学校」を19年4月に福岡と大阪で開校した。幅広い年代の女性30人程度が参加し、心・技・体をテーマに、現場で活躍する女性リーダーを育成している。
 今回は「ベーシックコース」となり、20年度はステップアップした講習や東京での開校も予定している。卒業生は「ダイバーシティーのつなぎ役になる」と期待している。

19年4月に福岡と大阪で開校した「けんちくけんせつ女学校」では現場で活躍する女性リーダーを育成

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