【建設ICT 新時代へ】近畿地方整備局 安全確保へ 地域業者に無人化施工普及 課題を克服するには? | 建設通信新聞Digital

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【建設ICT 新時代へ】近畿地方整備局 安全確保へ 地域業者に無人化施工普及 課題を克服するには?

 激甚化・頻発化する災害からの復旧工事では、安全確保が重要な課題となっている。建設業界では安全を確保しながら災害復旧工事を進めることができる無人化施工の取り組みが進んでいる。土砂崩落や落石の恐れがある復旧現場で遠隔地から建設機械を操縦することで、より安全を確保しながら作業が可能になる。しかし、離れた位置から操作するため、普段と感覚が違い、作業効率が落ちることや扱える技術者の少なさといった課題も残されている。
 近畿地方整備局も災害復旧現場での安全を確保しながら作業できる観点から無人化施工の普及に力を入れている。2月27日に、奈良県五條市赤谷地区の砂防堰堤現場で開いた遠隔操縦式バックホウの操作訓練には受注者ら約50人が参加した。

遠隔操作を体験する参加者

 2011年9月の台風12号・紀伊半島大水害は、奈良県、和歌山県、三重県に広がる紀伊山地で3000カ所を超える斜面崩壊や、17カ所の河道閉塞によって天然ダムなども発生した。12年4月には紀伊山地砂防事務所(現紀伊山系砂防事務所)を設置し、砂防事業を進めている。
 災害復旧事業では護岸工や砂防堰堤、渓流保全工などを実施しているが、土砂崩落や落石の危険性がある場所も残されており、無人化施工の必要性が高まっている。訓練の開会に当たり、同局近畿技術事務所の亀井稔副所長は「地域の建設業者にも無人化施工を知ってもらう必要がある」と普及の重要性を述べた。
 訓練では建設無人化施工協会の鈴木正憲技術委員長が、無人化施工の経緯や現状、課題について説明。ICT施工の普及とともにマシンコントロール(MC)やマシンガイダンス(MG)を活用することで、高品質な無人化施工が実現することを力説した。
 ただ課題もある。重機の機種や台数が限られていることとオペレーターの人手不足に加え、有人施工に比べて作業効率が落ちてしまうことだ。
 土木研究所が14年に発表した研究結果によると有人施工に比べて無人施工は約2.3倍作業効率が落ちるという。
 重機不足や作業効率の対策として効率的な運用やメーカーの技術研究、技術講習会などが必要だが、鈴木委員長は「事前の作業計画が重要」とした上で何をするのか、何が必要か、何が効果的なのかを現場ごとに事前に検討することで効率の良い作業が可能となると訴えた。
 効率を上げるためには、有人と同様の操作装置やオペレーターにより多くの情報を与え、有人施工の環境にできるだけ近づけることも重要になる。
 無線LANを使用した長距離での遠隔操作も可能となり、11年4月には九州地方整備局長崎河川国道事務所から直線距離で30㎞離れた雲仙・普賢岳にある建機を、光ファイバーを経由し操作する実験に成功した。先端建設技術センターによると光ファイバーの性能にもよるが、理論上は北海道から九州まで遠隔操作が可能だという。
 大手ゼネコンなどは既に独自の技術開発が進んでいるが、地域建設業者には浸透していない。実際に復旧現場で作業に当たるのは地域建設業者であり、相次ぐ災害に対応するためには無人化施工の裾野を広げ、誰でも安全に作業できる環境を整備することが先決。その点でも無人化施工に対する地域建設業の協力が欠かせない。
 
 
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