【建設ICT 新時代へ】石井建材 自社所有のICT建機を積極的に活用 自治体工事でi-con大賞受賞 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【建設ICT 新時代へ】石井建材 自社所有のICT建機を積極的に活用 自治体工事でi-con大賞受賞

 兵庫県北部の山あいの町・香美町に本社を構える石井建材(田村隆社長)の取り組みが注目を集めている。自社所有のICT建機を積極的に活用、砂防堰堤本体の3次元モデルを自主的に作成するなど先進的で意欲的な姿勢が評価され、国土交通省主催の2019年度i-Construction大賞優秀賞を獲得した。工事・業務部門を受賞した12者の中で唯一、地方自治体工事からの選出となった。

田村社長(左)と小谷氏

 もともと砕石の製造・販売からスタートした石井建材は、現在約60人の社員を擁し、工事の多くは兵庫県から受注している。また豪雪地帯でもある香美町で30台ほどの除雪用車両を所有、冬場は除雪作業に従事する地域の守り手としても活躍している。
 田村社長がICT建機と出会ったのは2016年のこと。「こんなに便利なものがあるのかと驚いた」。約2500万円をかけてマシンガイダンスを2台購入、すぐに現場に投入した。田村社長いわく、重要なのは「使える時にとにかく使う」こと。自社所有の利点を生かし工事の規模にかかわらず積極的に活用することで、ノウハウも自然と習得していった。
 受賞の対象となった工事は、兵庫県新温泉土木事務所発注の「(砂)一二峠川砂防堰堤工事」。香美町村岡区の一二峠(ほいとうげ)川に砂防堰堤を設置するもので、工期は18年3月8日から同年12月28日まで。堰堤の施工延長は107mほどだが、一般的なコンクリート堰堤と異なり「折れダム形状」となっている。この特徴的な形状にあわせた施工管理を実現すべく、積極的なICT導入が図られた。

一二峠川砂防堰堤工事完成後の点群データ

 マシンガイダンスを搭載したバックホウを使うことで作業時間の短縮を実現した。またバケット内の土量を自動測定する装置により、トラックの過積載を防止。最大のポイントとなったのが、砂防堰堤本体の3次元モデルを自主的に作成したことだ。設計モデルを作成することで、施工中は掘削後の袖部の納まりの確認や堰堤本体の位置出しに活用。完成後3次元測量を実施して得られた点群データにコンクリート堰堤本体の設計モデルを取り込むことで堰堤本体が設計の位置や高さに仕上がっていることを確認した。
 工事を担当した小谷周一建設事業部管理チームリーダーは「出来形については熟練者と初心者の差はなくなったが作業効率についてはまだ差が見られる。今後はこのような経験値の部分についても、ICTなどの技術が必要になるのでは」と将来を見通す。
 同現場の取り組みが表彰されたのは、実は今回で3度目。i-Construction大賞に先立ち近畿地方整備局の「2018年度砂防関係工事安全施工管理技術研究発表会」論文賞や「2019年度兵庫県さわやかな県土づくり賞」も受賞している。
 「県の発注工事でここまでやってのけたケースは少なく結果的に高く評価していただいた。とてもありがたい」と田村社長。その一方で、地域建設業の一員としてのジレンマを感じることもあるようだ。
 「熟練オペレーターが減る中でICTの導入は避けられない。一方で除雪作業などではまだまだ人間の技が必要。いずれにせよ、こうした流れが担い手確保にもつながってくれたらと思う」
 
 
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