【西松建設】「山岳トンネルAIソリューション」 技術×データ×AIで山岳トンネルにおける課題に挑む | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【西松建設】「山岳トンネルAIソリューション」 技術×データ×AIで山岳トンネルにおける課題に挑む

 西松建設は、山岳トンネルにおける「施工・品質」「地山評価」「安全・健康」などの課題解決に向け、同社が蓄積してきた技術やデータとAI(人工知能)による分析や推論を活用した「山岳トンネルAIソリューション」を展開している。中核となる「施工・品質」と「地山評価」の分野では、AIを活用した「掘削サイクル判定システム」と「切羽評価システム」の2つを確立し、現場実装を進めている。技術開発はsMedio(東京都中央区)が協力し、施工データを教師データに活用してAIの判定精度を高めている。

山岳トンネルAIソリューションのイメージ

 「掘削サイクル判定システム」は、山岳トンネル工事の穿孔、装薬、発破、ずり搬出などの切羽作業をネットワークカメラが24時間365日撮影し、映像をAIが常時判定して掘削状況を把握する仕組みだ。昼夜連続施工する作業を人の目で常に確認するのは難しいため、AIが代行し、異変が見つかれば作業内容を見直すなど作業の効率化に役立てる。

掘削サイクル判定システム

 AIの技術開発を担当する西松建設技術研究所土木技術グループの三井善孝主任は「1日の作業内容をきちんと記録し、振り返って作業を改善するために利用していく」とAI導入の目的を語る。集積したデータを日々分析し、改善につなげる。例えば「昼と夜で同じ作業をしているのに、作業時間が大きく違う場合はどこかに問題があることが考えられる。人の動きを分析して原因を探り、対策を講じる」ことで作業内容のブラッシュアップを図る。
 現場内の切羽作業を把握することで環境負荷低減にもつなげる。換気設備は坑内で多くの電力を消費する設備だが、切羽作業をAIが常時分析し、粉じんが生じる作業中は風量を増やし、それ以外は減らすなど自動制御につなげれば電力を抑制できる。
 一方、「切羽評価システム」は山岳トンネルで掘削する地山の評価をAIが代行、目視による地山評価のサポートに活用する。同社が蓄積してきた膨大な切羽断面データを学習し、さまざまな種類の評価を可能にした。さらに東京理科大理工学部土木工学科の小島尚人教授の特許技術・錯視誘発画像特徴強調システム(VIS)や地山強度評価の指針となる同社の穿孔探査システム「DRISS」で計測した強度データを加味することで判定精度の向上を図っている。
 また、トンネル内部は電波が通じにくいため、AIシステムはタブレット端末に搭載している。タブレット端末で断面を撮影した瞬間にAIエンジンが地山性状を判定する。その時、切羽観察簿に記録する評価区分を自動的に判定し、最終的に断面写真と一緒にクラウドにアップロードして管理する。「複数人で作成したデータも一元化して管理するほか、発注者指定の帳票に自動的に転記するため時間を大幅に省略できる」(三井主任)とメリットを挙げる。
 現在、現場でブラッシュアップした技術をベースにした「切羽AI評価システムサービス」を作成しており、sMedioが4月1日に提供開始する予定だ。熟練技術者と同等の評価を行うことを目標に技術開発を進めている。
 
 
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