【column BIM IDEATHON(10)】未来を創る、みんなのアイデア | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【column BIM IDEATHON(10)】未来を創る、みんなのアイデア

 前回の連載では、全4回にわたり開催されたBIM IDEATHON(以下BI)のイベント内容や運営の様子について紹介し、建築分野における課題発見や解決のための新たな提案を生み出すための、アイデアソンの可能性について触れた。今回はBIの参加者によって提案された実際のアイデアを紹介しつつ、建築分野や、その中でも特に建築情報やBIMに携わる人にとってのグループワークの有効性について、説明を加えたい(アイデアのなかには現状、類似のサービスが存在しているものあるが、BI開催時点の提案として紹介する)。

全4回のグループワーク課題

◆提案例1:エンドユーザー視点のBIM活用
 ひとつ目に紹介したいアイデアは、第2回のBIにおいて提案された「建てログ」というアイデア。現状の不動産情報のような供給側からの情報だけでなく、実際のエンドユーザーによる評価や口コミが蓄積される情報サービスが実現すれば、よりオープンな建物評価指標が実現し、複数の建物情報が集まればログの分析サービスなども可能になるという仕組みだ。
 また、インターネットによる地図情報はすでにわれわれの生活にも浸透しているが、例えば建物の階数や部屋については情報の受け皿となる建物情報の構築には至っていない。ここにBIMデータを有効利用できれば、設計・生産以外の目的にも新たな価値創出ができるだろうという視点が提案された。

◆提案例2:携帯端末による建築情報サービス
 もうひとつ紹介したいのは、第4回BIにおいて提案された「どこでもトイレ」というアイデア。外出時や移動時に、公共のトイレが見つからないといったケースはよくあると思うが、こうした悩みに応えるために、携帯電話のアプリケーションと連動したトイレの案内サービスが提案された。
 前述した「建てログ」のアイデアをもとに、BIMデータを空間のナビゲーションに使おうというものであるが、センサーと連動した待ち時間表示や、多目的トイレの対応内容表示など、より特化した利用目的に応じ、情報が得られる仕組みだ。また、トイレ利用率のログや満足度が、管理者・設計者・製品メーカーにフィードバックされる仕組みもあわせて提案された。

◆「プロセス」と「データ」をつなぐ
 この2案に共通するのは、建築分野における価値創造を実現する上での「プロセス」(=さまざまな立場の人の関わりや所作)と「データ」(=そのために利用できる情報やその構造)のつながりを建築のエンドユーザーの視点で提案した点にある。
 BIMのデータ利用を異分野に拡張することで建築情報の価値を高めようという姿勢は、当日のインプット講義(詳細な内容は本連載の第2回、第3回に掲載)で紹介した製造分野や情報分野における取り組みとも通じる点が多い。
 一方で、われわれにとって日常的な設計・生産の合理化や高質化においても、「プロセス」(=個々の思考過程やチームの体制)と「データ」(=設計情報やそのデジタル化)のつながりをいかに構築するかが肝であると捉えれば、この思考のフレームワークは、BIMをはじめとした建築分野における情報利用を考える際に有効な切り口であると言えよう。

◆領域横断的な対話力の育成
 こうした視点を、未来を担う次代の若手が組織を超えて集まり、アイデアソンという形式のなかで集中して共有できたことに大きな意義があったと考える。一言に建築分野と言っても担務する領域はさまざまであり、BI参加者もそれぞれのチーム内でアイデアを構築するためには自らの考えを相対化し、それは「プロセス」の話なのか「データ」の話なのかを明確にする必要があることを実感したはずだ。
 今後の建築分野が、異分野との協業を活性化し、新たな価値を創造していくにはなおさら、そのような横断的な対話力が重要になるだろう。企業を超えて全4回のイベントを実現できたことには、そういった意味でも価値があったと考える。
(日本設計/村井一)

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