【column BIM IDEATHON(1)】連載スタートにあたって | 建設通信新聞Digital

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【column BIM IDEATHON(1)】連載スタートにあたって

◆BIM IDEATHONとは?
 2017年6月を初回とし、18年3月まで計4回にわたって『BIM IDEATHON』が開催された。IDEATHON(アイデアソン)とは、多くの人が一堂に会し、あるテーマについて集中的にアイデアを出し合うことにより、新たな発想を創出しようとする取り組みである。今回の『BIM IDEATHON』においては、設計事務所やゼネコンの若手を中心に延べ120人が参加し、BIMを取り巻く課題や、未来を創る可能性について議論を深めた。
 日刊建設通信新聞(18年5月30日号)では、企画・運営のボードメンバーである、安井謙介(日建設計設計部門3Dセンター室)・村井一(日本設計建築設計群兼BIM室)・大越潤(大成建設設計本部構造計画部)・中嶋潤(大林組建築本部PDセンター)による座談会を開催し、その経緯などについてご紹介いただいた。本連載においては、この4人によるリレー形式で、BIM IDEATHONの際に発信・議論した内容を紹介していきたいと考えている。

BIM IDEATHON vol.4の会場

◆若手技術者の声を引き出す
 ICT技術の導入(クラウド、BIM、IoT、AI)、労働環境の変革要請(3K脱却、働き方改革)、プロジェクトの発注形態及び遂行体制の多様化(デザインビルド、ECI、IPD)など、いま日本の建築分野は、従来のパラダイムの転換を迫られている。その渦中でBIMは、設計施工プロセスに革命をもたらすと期待されているが、いまだ国内においては明確な道筋が見えているとは言い難い。
 これまでも業界構造を変えるべく、各種団体や学会において企業や研究機関の間で情報交換は行われてきた。しかし、新しい技術に最前線で向き合っているはずの若手が、そうした議論の場に参加するケースは少なかったように思われる。
 働き方改革や情報技術の利活用を推進するためには、次代を担う技術者がこの業界連携の環に加わり、積極的に業界の問題を発見し、革新のリーダーとなっていくことが重要だと筆者らは考えた。若手の技術者が組織を超えて一堂に集い、グループワークを通して業界革新のポイントを見つけ出すBIM IDEATHONの企画は、こうした思いや視点から生まれた。

◆協調型のイノベーションを目指して
 BIM IDEATHONは、毎回異なるテーマの下、約半日の開催とし、前半をボードメンバーらからのインプット、後半を参加者によるグループワークで構成した。限られた時間の中ではあるものの、参加者間で建築分野の課題を抽出し、BIMなどICT技術を用いて解決へと導くアクション(アイデア)の提案を求めた。回を重ねるごとに議論やコミュニケーションの密度と質は高まり、参加者間で協調的にアイデアが作り出されていった(実際に提案されたアイデアについても紹介の機会を設けたい)。
 さて、本連載ではまず、参加者の議論のよりどころとなったインプットを、ダイジェストで紹介することから始めたい。インプットの内容は、情報分野や製造分野を始めとする他業界における革新の取り組みを検証し、建築分野が参照できる点、また、一方で建築分野ならではの強みや優位性について、ボードメンバー間で議論を重ねた結果でもある。
 製造業におけるIndustry4.0を例に挙げると、各社のコア技術(競争領域)ではない、共通システム(非競争領域)を生み出すことで、競争と共創のバランスを取り、競争領域へリソースを集中する体制が実現されている。例えば建築分野においても、BIMデータを始めとした建築情報の流通性を高めるには、そのルール構築やリテラシー共有が必要となるが、その実現のためには、企業の垣根を越えた取り組みが不可欠である。
 このような革新の基盤となる共通システムへとつながる視点や、アイデアを生み出すことが、BIM IDEATHONの重要な目的のひとつだったが、本連載ではその振り返りを通じて、より多くの人と「建築分野とBIMの未来」を考えたい。
(安井謙介、村井一、大越潤、中嶋潤)

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