【"データ×金融"で業界ビジネスモデルを変革】ランドデータバンクが描くビジョンとは | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【”データ×金融”で業界ビジネスモデルを変革】ランドデータバンクが描くビジョンとは

 建設事業から得られるさまざまなデータを活用し、建設業に最適化した金融サービスの提供を目指すランドデータバンク(LDB、東京都港区、徳永順二代表取締役社長CEO)。初弾のサービスとして9月に開始した「立替・決済サービス」は、元請企業の資材・労務費の最大1億円を立て替え、最短2週間で資材・協力会社に入金する。手数料を「1%」に設定し、中堅中小の元請企業が資金繰りを改善しやすいサービスを目指した。徳永社長は「受注力や施工力のある企業が発展できる環境づくりに貢献したい」と意気込む。

徳永社長


 同社は、「『データ×金融』で建設業界のビジネスモデルの変革に挑戦する」をコンセプトにINCJ(産業革新投資機構)、コマツ、三井住友銀行グループ3社の出資で2019年7月に設立した。建設事業のさまざまなデータを収集する金融プラットフォームを構築し、パートナー企業とともに金融サービスを提供する。

ランドデータバンクのビジョン

■最大1億円を最長10ヵ月間立て替え
 建設業界のビジネスモデルの改善で課題になるのが、工事費が入るまでは自前の費用で資材や労務を調達することの多い、「キャッシュアウト先行型」のキャッシュフローだ。建設業は受注から工事費受領までの期間が長く、部分的な前払い金はあるものの多くは完成後に支払われる。徳永社長は「資材・労務費を捻出する際、別の現場で得た資金を充てることが多い。不況などで受注サイクルが崩れると資金がショートする危険性が高まる」と指摘する。

 大手企業であれば、株式市場からの資金調達や社債発行、銀行融資、公的融資制度など多様な調達手段があるが、中小企業は地元の銀行融資などに限られるのが実情だけに、資金調達が難しくなると、売掛金を売却して現金化するファクタリングを活用するケースも多い。「10%前後の高額な手数料が必要になるため、利益を圧迫されやすい」のが課題だ。

 今回の立替・決済サービスは、最大1億円を最長10カ月間立て替え、「キャッシュアウト先行型」の改善に貢献できる。元請企業と資材・協力会社の双方が利用でき、手数料は、中小建設業の利益率が3%前後にとどまることから、元請企業と資材・協力会社ともに一律1.0%に設定した。

立替・決済サービスのイメージ


■力のある企業が発展する環境に
 具体的には、元請企業が支払う資材費や労務費をLDBが立て替え、資材・協力会社に支払う。元請企業は現場が完工した後に一括して費用をLDBに支払う。資材・協力会社は、元請けに納品したことが確認されれば、LDBから最短2週間で入金される。

 元請企業の与信は、財務情報と経営事項審査の評定点を分析するのが特徴だ。建設業に特化した与信分析モデルの活用により決算書、担保、連帯保証の提出を不要にしウェブサイトから申請する。21年度は、工事の進捗状況などを勘案した途上与信システムを導入しより幅広い顧客サービスを提供する。

 徳永社長は「中小建設業の受注金額の適正規模は資本金の10倍と言われ、単純に大きな工事を受注するだけでは仕事が回らないのが難しいところ。『受注量は微増がいい』と言われるが、会社を大きくしたい人には大きな壁だ。工事費が増えた分だけ立て替え、資金を心配することなく仕事に集中できる環境にしたい」と意義を語る。同社が横浜市港北に開設したオペレーションセンター(0120-577-525)で申し込みや問い合わせを行う。

■新たなサービスをパートナーと開発
 そのほかにも金融サービスの開発を進めている。財務・非財務、受発注・決済、車両、現場計測、建機稼働、人材マッチング、工程管理、作業実績などの各種データをプラットフォームに集積し、「立替・決済」「保険」「リース・割賦」などの金融サービスをパートナー企業と開発する。

 例えば保険会社とは、現場の安全や健康を判定するアルゴリズムを開発し、現場の安全性に合わせて保険の掛け金が変動するサービスを検討している。資機材の購入も、毎月一律の金額を割賦払いするのでなく、受注や工期の山に合わせて支払い金額を変えるサービスも考えている。「建機の利用量に応じた支払いも可能」とし、ユーザーが使いやすいサービスの構築を目指す。今後について徳永社長は「現場のバックヤードを含めてDXを進めるアプリを開発し、建設業界のビジネスモデルの変革に貢献したい」と見据える。

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