鹿島は、構造計画研究所が提供する「力学系理論を用いた河川の水位予測システム」をカスタマイズして、同社が施工を進める実際の工事に適用した。6時間後の水位を定量的に把握することで、河川での施工の安全性を高めることが狙い。取得した測定地点での予測と実測の水位を比較・検証した結果、その有効性を確認。今後、他の工事への積極的な展開を見通す。
これまでの水位予測は、物理現象を数式でモデル化する「物理モデル」によって行われていたが、統計解析やAI(人工知能)など物理現象のモデル化が不要な予測手法が実用化されている現状に着目。「力学系理論」に基づく予測システムを導入した。
この予測システムで用いられる予測手法は少ないデータからでも精度の高い予測が可能であるという特徴を持つ。
高精度な予測を可能とするため、予測モデルに入力する水位と雨量のデータ範囲の設定にAIを活用するなど、実際の現場に適用するためのカスタマイズを行っている。
「潜水作業」「台船作業」「一時中断」「避難判断」の4つの判断レベル(目安)を設定。画面にそれぞれのレベルを超える確率が表示されるだけでなく、レベルを超す水位・流量が予測されると登録者にメールで通知される。
適用したのは、同社JVが施工を進める国土交通省北陸地方整備局信濃川河川事務所の「大河津分水路新第二床固改築I期工事」(新潟県長岡市寺泊野積地先)。昨年10月から適用を開始した。
これまでに取得した予測地点の実測での水位と予測水位を比較した結果、大きな誤差がないことを確認。現状の河川の水位がリアルタイムに把握できる一方で、6時間後の水位を定量的に把握できることから、各種作業の実施や継続の可否、避難の要否の判断など、安全性の向上と施工管理の高度化に役立つ。
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