◇事故防止へ人材、新技術、民間の活用に期待
A 1月28日に、埼玉県八潮市で大規模な道路陥没事故が起きた。原因は下水道管の破損とみられる。
B 国土交通省は、日量最大処理水量30万m3以上の大規模下水処理場に接続する管径2000mm以上の下水道管路を対象とする緊急点検を都道府県に要請した。
C 愛知県は対象ではないものの、同規模施設である矢作川流域下水道のうち、岡崎市、豊田市、安城市、西尾市の延長約39㎞を緊急点検している。3日からはマンホール内に異常がないか目視などで確認している。県としては一刻も早く点検を完了し安全性を確かめたい考えだ。
D 愛知県以外でも全国の多くの自治体が、事故を契機に自主的な点検を行っている。
A 今回の事故は下水道管の老朽化が原因と特定された訳ではないが、標準的な耐用年数とされる50年を経過した管路は全国的に増えており、老朽管の更新が大きな地域課題となっている。事故を起こさないためには何が必要だろう。
B 管の更新を担う建設業の担い手確保は必須だ。人手不足を理由に、早急に対処しなければならない危険箇所が放置される事態は避けたい。
C ウオーターPPPを可能な範囲で導入していくことも大切だ。民間企業の経営ノウハウや創意工夫を活用し、事業の効率化が図られる。
D AI(人工知能)などの新技術にも注目したい。岡崎市では、市が記録する水道の漏水事故や下水道管のカメラ調査結果、環境データを基に、AI技術を使って市の状況に合わせた管路劣化予測診断モデルを構築している。更新計画や維持管理手法の検討に役立てるそうだ。
B 今回の事故は道路利用者だけでなく、周囲の住民の生活にも大きな影響を及ぼした。行政の早急な対応が求められる。
◇開かれた「見せる技術研究所」に変革
A ところで、ゼネコンなど建設会社の技術研究所に関する記事が最近目立つ。
E 大成建設と大成ロテックが福島県田村市に新たな研究施設を開設したほか、安藤ハザマは技術研究所をリニューアルした。鹿島は、技術研究所西調布実験場内の無響室をリニューアルした。少し前になるが、清水建設のイノベーションと人財育成の拠点「温故創新の森 NOVARE(ノヴァーレ)」の開設も話題になった。
F 各社が技術研究所への投資を進めているのは、2011年以降、建設投資が徐々に回復した中で、ここ数年、ゼネコンも投資余力が出て、技術研究所の更新などに力を入れられるようになったからといわれる。特に最近の特徴は、『見せる技術研究所』が増えている印象がある。ゼネコンに限らず、日本道路も技術研究所と社員研修施設、機械センターを統合した複合施設とし、「顧客との共創」を特に重視したようだ。
A 技術研究所は競争力の源泉である新技術を生み出す場所であり、なかなか外部の人を招き入れることはなかったようだが。
E かつては単独で独自技術を開発することが多かったため、確かに社外から研究所に人を招き入れることは少なかった。ただ、生産性向上や技術革新に向け、ベンチャー企業や異業種との連携によるオープンイノベーションが重視されるようになり、共同開発案件が増えている。このため、研究所を閉鎖的な空間から、パートナー企業と共創する開かれた空間へと生まれ変わる必要性が出てきた。安藤ハザマの所長も、技術フェアをきっかけに「仲間を増やしたい」と協業・共創に力を入れる考えを示していた。
F リニューアルなどを機に一層、建設業界のイノベーションが進むことを期待したいね。