【低頻度巨大災害への備え】日本学術会議と防災学術連携体がシンポ 災害の影響や対応策などを議論 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【低頻度巨大災害への備え】日本学術会議と防災学術連携体がシンポ 災害の影響や対応策などを議論

 頻度は低いが発生すれば国難級の被害となる巨大自然災害にどう備えるべきか。日本学術会議の防災減災学術連携委員会と土木工学・建築学委員会低頻度巨大災害分科会、58学会で構成する防災学術連携体は18日、「低頻度巨大災害を考える」と題した第9回防災学術連携シンポジウムを東京都港区の同会議講堂で開いた。巨大な地震や津波、スーパー台風、広域の大水害、火山の大規模噴火、さらにはこれらの複合災害の発生可能性と社会への影響について、これまでに得られた科学的な知見をもとに各分野の専門家が発表するとともに、その対応策について幅広く議論した。
 日本学術会議連携会員、防災学術連携体運営幹事の和田章東工大名誉教授が趣旨説明し、「地球は生きている。その地球にわれわれは生きていることを忘れてはいけない」とした上で、「過去に起きたことはこれからも起こる。世界で起こることは日本でも起こり得る。ある地域ではまれなことでも日本全国で見れば決して低頻度とは言えない」などと指摘。さらに「社会は変わっていく。過去の経験ではなく、いまの社会と照らし合わせて考えていかないといけない」と呼び掛けた。
 この後、各学会から18の発表があり、これを踏まえた質疑と総合討議が行われた。この中で、低頻度巨大災害分科会委員長の寶馨京大大学院総合生存学館長は同分科会の活動とともに現在検討を進めている提言案の基本的な考えを説明。総論として、「低頻度巨大災害に対するインフラ整備の限界を認識し、避難・転地・保険・補償など、災害リスクの回避・分散・移転を総合的に考えたリスクガバナンスの研究や施策を実施すべき」としたほか、緊急事態対応が効果的にできる法整備の必要性にも言及した。
 各論としては、被災する可能性の高い地域からの移転を積極的に推進することや巨大災害を想定したリスクコミュニケーション、情報伝達システムなどへの投資、社会実装を意識した研究開発の重視などとともに、「中頻度の災害であっても異なる種類の自然災害が複数同時発生すれば巨大災害になる。こうした複合災害も考慮し、災害時に危機管理上の中枢を担う機能の維持にはあらゆる事態を想定して備えを準備すべきだ」と強調。
 また、南海トラフ地震と首都直下地震の2つの「国難」災害の被害を極力低減させるため、今後15年以内に公共投資を集中することが必要とした上で、「それでもなおかつ大きな被害が出ることに留意し、公共投資のあり方として、インフラ整備にとどまらない投資を考える必要がある」とも指摘した。
 このほか、土木学会地震工学委員長の目黒公郎東大教授が「大規模複合災害・巨大地震災害の全貌解明への取り組み」を解説。日本自然災害学会の河田惠昭京大名誉教授は「国難となる巨大災害の事前対策」として「縮災」の取り組みが必要だと訴えた。

 
 
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