【2025万博会場にも提案】越井木材工業 低コスト・短工期工法「木製浮き基礎」実用化への取組とは | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【2025万博会場にも提案】越井木材工業 低コスト・短工期工法「木製浮き基礎」実用化への取組とは

 ことしで創業130年を迎える木材加工メーカーの越井木材工業(大阪市)が丸太の組み合わせによる基礎工法「木製浮き基礎」の実用化へ向けた取り組みを進めている。コストが安く、短工期で施工でき、再利用も可能な工法として、2025年大阪・関西万博会場での利用を目指している。越井潤社長は「伐採期に入っている国産木材の用途を拡大することがいま、業界で求められる命題だ」と力を込める。各方面の専門家と協力し新たな発想による木材加工で未来社会のデザインづくりにアプローチする。

越井潤社長


 同社の歴史は木製電柱の加工が始まりで、鉄道レールの枕木なども含め、産業資材の防腐処理に特化して事業展開してきた。木材を長期使用できるように処理する基本スタンスは変わっていないが時代の変化に合わせ、取り扱う品目も多様化している。建築分野では住宅の土台など耐久性が求められるところに使われている。最近では柱や梁などの構造材にも利用される機会が増えてきた。

 非住宅系は10年の公共建築物等木材利用促進法の施行以降、学校や庁舎、民間のホテルなど木材利用が着実に増えている。同社では防腐や不燃など用途に応じた加工を施し、この動きに対応している。

 そうした中、伐採期を迎えた日本の木材産業だが、製品化の需要と木材資源のバランスがとれていない。「切って、使って、植えるサイクルを確立することが業界の使命だが、どこで使うのかという課題が出てくる。現状では多くの木材がバイオマスの燃料として使われている。われわれとしては価値のある用途に利用したいと考え、新たなマーケットを作るしかないとの結論に至った」と語る。

 18年に地元大阪での万博開催が決まったころ、ニュージーランドの企業が興味を引く技術を持っているとの情報をキャッチした。そこで越井社長本人が現地に赴き、同工法を開発した企業に話を聞きに行った。それが木製浮き基礎だ。
 「地盤改良が不要で、現場での作業も工場で切っておいた丸太を組み上げる作業となるため、工期を大幅に短縮できる。また、解体も容易でさらには別の現場で再利用することも可能だ」とメリットが多いことを強調する。

省施工・低コストな木製浮き基礎


 日本では法律上、床面積500㎡までで木造2階建てか平屋建ての建築物を建てることができる。用途は住宅や倉庫、店舗などさまざまだが、「特にコンビニに注目している」と言う。

 安くて施工も早いので悪いところがないが、唯一の課題は実績がないことだ。「知名度を上げ、普及させていくためには耐震性や耐久性などの性能をもっとわかりやすくする必要がある」として、設計マニュアルを作成中。今後は公的機関の技術審査証明の取得を目指す。

 国内での実用化に向け現在は企業や学識者で構成する都市土木木材利用促進研究会(会長・東畑郁生関東学院大客員教授)を設置して研究を進めている。
 そして、最もアピールできる場所として、関西・大阪万博への利用を提案することにした。2025年日本国際博覧会協会が設置した「People’s Living Lab促進会議」において会場で実証する技術の募集に研究会名義で応募した。実証試験では、丸太基礎には不等沈下をモニターするセンサーなどを取り付け自動制御する性能を内蔵させる。さらには木材のセルロースにスズをコーティングすることでナトリウムイオン電池機能を付与することも検討している。

 電池については木材の防腐処理の主成分が銅であることから発想を得た。「すべてはこれからで、いまはまだ夢物語。木材はローテクだが加工することによってハイテクになり得るのなら、エネルギー問題を解決でき、木材利用の未来をも変える夢の技術になる可能性を秘めている」と熱く語る。

本社工場。さまざまな木材処理で付加価値をつける

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