【大学と成長するまちへ】大阪城東部まちづくりが始動 大規模開発プロジェクトの全貌に迫る | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

公式ブログ

【大学と成長するまちへ】大阪城東部まちづくりが始動 大規模開発プロジェクトの全貌に迫る

 年間1339万人の来場者が訪れる国際的な観光拠点である大阪城公園(公園面積約105ha)は、大阪の文化・観光・学術・交流機能が集積する東西都市軸の東部に位置する重要拠点として、大阪全体の発展をけん引できるポテンシャルを秘めたエリアだ。その東側に隣接する大阪城東部地区(エリア面積約40ha)で大学を核としたまちづくりの検討が始まった。「(仮称)大学とともに成長するイノベーション・フィールド・シティ」をコンセプトとした官民連携の大規模開発プロジェクトが始動する。

ゾーニング図

 東部地区は、JR環状線の森ノ宮駅~大阪城公園駅の東側に大阪メトロ森之宮検車場やJR西日本森ノ宮電車区、都市再生機構の森之宮団地、市の森之宮工場跡地とその建替計画用地、中浜下水処理場、森之宮小学校などがある。未利用地の検討を含め、にぎわいの創出が課題となっていた。

 大阪府と大阪市が2012年にまとめた「グランドデザイン・大阪」では象徴的なエリアとして位置づけられ、にぎわい創出と森之宮周辺を活性化する方針が示された。16年には「大阪城東部地区のまちづくりの方向性素案」がまとまった。しかし、大阪市内の各地でプロジェクトが動き出す中、東部地区については、事業化へ向けた具体的な動きはなかった。

 転機となったのは、19年8月に公立大学法人大阪がエリア内に新キャンパスを整備する構想を打ち出したことによる。新大学の新たな機能(都市シンクタンク・技術インキュベーション)を発揮させるための企業・機関などとの連携に有利になるとして同地区を選んだ。構想では、大学の本部となる森之宮キャンパスを同地区内東側の元焼却工場建替計画用地(2.6ha)に整備し25年度に開校する考えを示した。

 府市では構想を受け、同12月にまちづくり検討会(会長・田中清剛大阪府副知事)を設置し、まちづくりの方向性を再検証することとした。

◆4ゾーンに分け段階的に整備
 検討会では、まちづくりの方向性案について審議した。まちづくりコンセプトを具体化する戦略・シナリオとしてはまちにひらかれ、まちとともに成長する「次世代型キャンパスシティ」、健康医療・環境などの既存資源を生かした「スマートシティの実証・実装フィールド」、多様なひと・機能・主体が交流する「クロスオーバーシティ」を設定。新大学を先導役として、観光集客や健康医療、人材育成、居住機能を集積させ、多世代・多様な人が交流する国際色のあるまちを目指すことにした。

 土地利用では、▽イノベーション・コア▽親水空間+立体活用▽多世代居住複合▽拡張検討–の4ゾーンに分け、段階的に整備する。地区全体の拠点となるイノベーションコアは、市の森之宮工場元建替計画地と大阪メトロ検査場の一部に計画。大学の基本機能と大学が先導役となり展開する機能を中心に構成する。高度利用を図りながら新大学の都心キャンパスを第1期として25年度までに整備する。

 大学が先導役となり展開する機能としては科学・技術とアート・デザインの融合によるまちづくりを目指す。この取り組みは、それぞれの英頭文字をとって「STAD」と名づけた。
 1期キャンパス整備後には、大学施設の関連機能を中心とした施設整備を1.5期事業として誘発させる。民間活力の導入を想定し、20年度は対象となる施設や対象範囲、事業スキームなどの検討に着手する。併せてインフラ関連で鉄道施設上部に東西動線の確保に向けた事業手法の検討も始める。

 このほか、浸水空間+立体活用ゾーンは河川との親水性や大阪城公園との一体性を図り、多世代居住複合ゾーンは複数立地する健康医療機能と連携して、スマートエイジングシティの取り組みを展開し、商業・業務を含めた居住環境を実現する。

 現在は、まちづくりの方向性案を事務局が修正中で5月にパブリックコメントを募る。

地区を縦断する豊里矢田線。両側は イノベーションコアゾーン

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら