【記者座談会】新型コロナウイルス 受注競争への影響 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【記者座談会】新型コロナウイルス 受注競争への影響

A 世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスだが、一部の国では経済活動の再開に向け期待が高まっている。この影響が経済面でどの程度のダメージを与えるか、全体像はまだ見えてこないが、国内建設業界の業績に与える影響はどうだろうか。決算発表を遅らせる動きもあるが。
B 製造業など多くの業界で設備投資計画の軌道修正が余儀なくされれば、先行指標である工事受注は落ち込む可能性が高い。そもそも開示義務はないが、通期の受注見通しは立てにくい状況にある。一方、足元では感染拡大防止に向けた工事一部中止の影響で、売上高の計上に遅れが出ると同時にさまざまな経費の計上も迫られる。こうした業績の下降圧力が今後、各社の受注競争にどんな影響を与えるか。リーマンショック以降、落ち込んだ工事利益率は回復し、ここ数年は一定の水準を維持してきた。量の確保はもちろん、質の低下をどう食い止めるかが大きな課題だろう。
C 建設会社の大半は経営規模が小さく、体力のある大手企業はごく一握りに過ぎない。まず規模の小さな会社から、深刻な経営危機に直面していく可能性が高い。地方経済圏ではその影響はさらに大きいだろう。上昇基調にある労務単価に影響が出ないことを願うばかりだ。
D 市場の環境変化という点では、大手IT企業などで都市部のオフィスを縮小する動きが出始めた。否応なしにテレワークが普及し、無駄な床を抱える企業が増えた。オフィス賃料など固定費の削減は、企業経営にとって永遠のテーマでもある。新型ウイルスは、企業のオフィスニーズにも大きな変化を与えつつある。

新型コロナウイルスでオフィス 事業をめぐる環境変化は大きい

◆「新たな通常」へ「変化への対応」が急務

A どうしても暗い話ばかりになりがちだが、少し無理をしてでも明るい材料を探してみよう。新型コロナの影響を言い訳に使うのではなく、「新たな通常」として向き合い、変化に対応していく必要がある。でなければ人間も企業もこの難局を乗り切るのは難しい。「変化への対応」の重要性は、ダーウィンの時代からさまざまな局面で叫ばれてきた。
C やはり「ウェルネス」領域は伸びるのではないか。建設・不動産各社は既に、健康をキーワードとしたさまざまな提案を展開してきたが、顧客の関心はさらに高まるだろう。公衆衛生の分野なども含め、ゼネコンにとって付加価値を発揮しやすい領域だ。このほか、インターネット通販などの需要は続伸しているため、物流不動産市場は堅調さを保ちそうだ。今世紀初頭に外資系企業が開拓した物流不動産市場は、いまや国内の大手不動産もこぞって参入している。かつてのように簡易なS造の倉庫ばかりではなく、免震構造を採用する大型施設も珍しくない。
B さまざまな業界で、業績悪化に備えて土地などの資産リストラを進める動きが加速しそうだ。リーマンショックの後もそうだったが、不況時は土地の仕入れ時でもある。土地が動けば当然、新たな工事需要につながる。立地によっては再開発事業の種地となる可能性もある。一方、世界中の産業活動の停滞に伴い、原油や鉄などさまざまな原材料価格が低下している。それ自体が経済全体に与えるダメージは大きいものの、調達する側の建設業界にとっては、利益率を押し上げる要因の1つになる。もちろん調達のタイミングにもよるが。
D 業績や数字の落ち込みも心配だが、それ以上に心配なのはマインドの落ち込みだ。国、企業、団体、グループ、チームなどあらゆる組織のリーダーによる重みある声に期待したい。その一方で、困難に向き合い、それを乗り越える経験は、若い世代、未来のリーダーたちにとっても大きな糧となるはずだ。

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