【新型コロナウイルス】感染拡大が建設業界に与えた影響とは 各社の対応と広がる不安 | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【新型コロナウイルス】感染拡大が建設業界に与えた影響とは 各社の対応と広がる不安

 新型コロナウイルス感染拡大が建設企業の事業活動に対し急速に影響を与え始めていることが、東京商工リサーチの5月調査で浮き彫りになった。建設企業の事業活動での新型コロナの影響は他産業と比べると影響度合いは前回調査まで少なかったが、今回調査で他産業並みまで深刻さの認識が増した。政府は資金繰りを含めさまざまな企業活動支援を打ち出しているが、建設企業はコロナ後が見通せないことや今後、建設投資抑制の可能性も否定できないことによる不安感が増している。

新型コロナウイルス発生による事業活動への影響

上場企業 株主総会どう対応/中小・零細 心理的不安が拡大

 東京商工リサーチがまとめた「第4回新型コロナウイルスに関するアンケート調査(速報値)」(調査期間は4月23日から5月12日、回答1万2717社)で建設業の「影響なし」回答が前回(4月調査)の5.2%から3.5ポイント減の1.7%へ急減した。前々回(3月調査)、建設業の「影響なし」は10%超、2カ月で10分の1程度まで減少した。

 事業活動への影響が建設企業でも広がっていることについて、東京商工リサーチは、「工事中止やサプライチェーン、物流の混乱による建築資材の滞りが影響している」と分析している。

 建設企業への影響として深刻なのは、コロナ終息の時期とその後の経済状況が予測できないことだ。コロナ後が見通せないために、特に3月期決算の上場建設企業にとって2021年3月期予想数字の算出が難しい状況が続いているほか、目前に迫った株主総会の開催形態変更有無の判断も迫られている。

 こうした状況を踏まえ政府は8日、「第5回新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」を開催、株主総会の延期や株主総会の二段階方式(継続会方式)、オンライン株主総会など企業が選択できる対応への支援について改めて確認した。

 会合では、金融庁、法務省、経済産業省が、継続会の指針及び株主総会Q&A更新について説明したほか、日本公認会計士協会は株主総会延期も働きかけていることを強調した。また、東京証券取引所は7日時点での企業への調査で、継続会導入検討企業が83社と増加していることを説明した。日本経団連も来場する株主を一定限度にするモデルと株主来場を遠慮してもらう別モデルの株主総会招集通知モデル作成を紹介した。

 政府がほぼ週一ペースで会合を開いているのは、3月期決算の上場企業が在宅勤務拡大とコロナ対応によって、決算集計と監査の遅れや後発事象への対応で、投資家との建設的対話や株主総会開催のあり方に苦慮していることが理由。

 一方、中小・零細の建設企業もコロナ禍の影響に戦々恐々としている。公共・民間、建築・土木、元請け・下請け問わず、仕事量と単価に今後どのような影響があるのか分からないからだ。分からないから、リーマンショックという12年前の悪夢が脳裏をよぎる。現状、建設産業界は目に見える形で深刻な影響が表面化していないが、心理的な不安が先行しつつある。

企業の資金繰り支援で全銀協に不渡り猶予要請/金融庁と日銀

 金融庁と日本銀行は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う企業の資金繰り支援として、手形・小切手の不渡り(指定期日に決済できないこと)処分を当面、猶予する特別措置を全国銀行協会(全銀協)に要請した。災害救助法適用時と同様の扱いで、電子記録債権も対象。全銀協は、不渡報告への記載や取引停止処分を猶予するよう全国の手形交換所に通知した。実施は4月16日付。

 手形・小切手の所持人は予定期日に受け取れるはずの資金が入らないことに変わりはない。苦境に陥った中小・零細企業にとって、今回の措置は時間を止める一時しのぎにすぎない。

決算公表企業の6割次期予想は開示せず/東京商工リサーチ

 東京商工リサーチは、5月6日までに2020年3月期決算を公表した276社(3月期決算の上場企業の11.4%)の業績動向をまとめた。最多は「減収減益」で103社だったが、「増収増益」も96社あった。

 一方、次期(21年3月期)業績予想は公表した276社のうち6割の168社が「未定」として開示しなかった。新型コロナウイルス感染拡大の業績影響の合理的算定が困難であることが理由。次期予想を開示した108社のうち2期連続の「増収増益」予想企業は23社に止まった。

1日から始まった持続化給付金受け付けに対しオンライン申請する、都内在住のフリーランスのAさん。撮影は1日午後都内

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