【開業から30年】節目を迎えた大阪モノレール 約9㎞の南伸事業が2020年度から本格化 | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【開業から30年】節目を迎えた大阪モノレール 約9㎞の南伸事業が2020年度から本格化

 大阪モノレールは、大阪の都心に一点集中する既存の鉄道網を有機的に結合する環状鉄軌道として計画、現在は大阪国際空港(伊丹空港)につながる大阪北部の東西軸交通としての役割を担っている。2020年度からは門真市駅から約9㎞にわたる南伸事業が本格化。また6月で開業から30年の節目を迎えるなど、新たな局面を迎えつつある。

開業から30年、現在は日本国内 最長路線のモノレールとなった


 大阪モノレールは現在、大阪空港駅(豊中市)から門真市駅(門真市)まで約21.2㎞の本線と、阪大病院前駅(茨木市)からの枝線(彩都線)約6.8㎞で構成している。1990年6月の千里中央駅(豊中市)~南茨木駅(茨木市)間開業を皮切りに、97年に大阪空港駅から門真市駅に至る本線が完成。07年には彩都線も供用開始し現在の陣容となった。約28.0㎞にわたる累計路線距離は、モノレールとして国内最長を誇る。

 大阪モノレールの運営を担っているのが、大阪府の第3セクター会社として80年に設立された大阪高速鉄道だ。同社の井出仁雄社長によると15年度に累積損失が解消され、近年は安定した経営を維持していると説明する。開業当初の利用客数は1日平均2万人に満たなかったが、現在は14万人近い利用を集めるまでに増え、伊丹空港の利用者や沿線住民の足としても定着している。

 彩都線以来の路線建設となる南伸事業について、同社は国土交通省から4月1日付で工事施行認可を取得。これを受け今後は秋ごろから現地工事に着手し、29年の開業を目指している。

 事業区間は門真市駅(門真市新橋町)から東大阪市若江西新町までの8.9㎞で門真南(門真市三ツ島)・鴻池新田(東大阪市鴻池)・荒本(東大阪市荒本北)・瓜生堂の4駅を新設。支柱や軌道桁などのインフラ部は大阪府が、車両や電気線・信号通信線などのインフラ外部を大阪高速鉄道が主に担当する。想定事業費はインフラ部が740億円、インフラ外部が286億円となっている。

鉄道ネットワーク図


 「大阪メトロ長堀鶴見緑地線、JR学研都市線、近鉄けいはんな線、近鉄奈良線の4線と新たに結節することで、広域的なネットワーク機能とリダンダンシーが強化される」と井出社長は南伸事業の意義を強調する。

 工事に向け、大阪府は現時点で第1四半期と第2四半期に支柱建設工事の発注を予定。また、軌道桁や支柱などの詳細設計業務も第1四半期から第2四半期にかけて発注、門真南(門真市三ツ島2)、鴻池新田(東大阪市西鴻池2)、荒本(同市荒本北2)の駅舎詳細設計も第2四半期に発注を見込む。大阪高速鉄道も府からの受託事業として、(仮称)瓜生堂車両基地(東大阪市)の支柱建設工事などに着手する予定だ。

 南伸事業の本格化などを見据え、大阪高速鉄道は新たなフェーズへと踏み出した。同社が公表した中期経営計画によると、24年度までの設備投資計画は総額241億円で、このうちモノレール南伸に36億円を投じる。内訳は20年度が1億円、21、22年度が3億円ずつ、23年度13億円、24年度16億円となっている。モノレール南伸以外の設備投資内訳は、安全投資が125億円、車両80億円。自然災害対策の一環で車両部品や碍子(がいし)の落下防止対策、地震被災度推定システムの構築に取り組む。また先駆的に取り組んできた可動式ホーム柵の設置についても、22年度末までに全駅で設置完了を目指す。

 30年の節目を記念し社名も変更。6月1日から「大阪モノレール」として新たなスタートを切ることになった。
 「感謝の思いとともに、安全を徹底しつつより便利で快適になるようサービス向上に努めていきたい」と井出社長は前を向く。

1990年6月の千里中央駅~南茨木駅間開業時式典

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