発注者の生産革命 デジタルツインと新現場力(4)災害対応への貢献 | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

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発注者の生産革命 デジタルツインと新現場力(4)災害対応への貢献

【初動対応の迅速化に貢献/地域の災害情報ハブに】
 デジタルツインは、発注者の事業調整やインフラ管理に加え、災害時の初動対応にも効果を発揮する。ポイントは、JACICクラウドを通じて被災現場からもたらされる画像などの情報の即時性・同時性にある。災害対策本部の関係者が時と場所を選ばずにリアルタイムに情報共有することで初動対応の迅速化に貢献する。

 具体的な例として、JACICクラウドのシステムに組み込まれた360度カメラを活用し、現地の映像をインターネットを通じてウェブ会議のルームに直接送信することで災害対策本部の関係者がリアルタイムに閲覧できる。タブレットなどのモバイル端末からもルームに入ることができ、メンバーは場所を選ばず会議に参加できる。

 地方で災害が発生したとき、整備局出張所の職員が現場に360度カメラを設置したり、ドローンで空撮した映像を取得すれば、インターネットにつないだ瞬間に東京の本部が閲覧できる。VR(仮想現実)とも連携し、ヘッドセットを装着すればVR空間に関係者が集結して対応を協議することができる。同じ空間に入ることで復旧・復興方針を立てやすくなり、初動対応の迅速化に貢献する。

 日本建設情報総合センター(JACIC)の尾澤卓思理事は「これまでは被災地を撮影し、対策本部に映像を送るだけでも関係者は気をもむことが多かった。見たい位置にカメラを指定するのも大変な作業のため、360度カメラとVRを活用することでこれらの課題が解決できる。所定の時間に災対本部の会議室に集合できない人もモバイル端末から会議に参加することができ、時と場所を選ばずに対応を検討できる」とメリットを挙げる。

 また、防災時のJACICクラウドのネットワークは、国の情報ネットワークシステムとは別系統で構築するため、災害対策本部は2つの系統で情報収集できる。このJACICクラウドは、より自由度の高い活用が可能になり、「出張所長が現場に行きスマートフォンなどで即座に撮影した映像も対策本部はすぐに共有できる」など柔軟な運用が可能だ。

クラウドによる災害対策支援


 ウェブ会議は、工事事務所、本局、本省の関係者に加え自治体も参加し、地域の災害情報共有のハブとして活用できる。現地の工事事務所長は、いままで自治体の首長とホットラインを構築し、その電話対応などに忙殺されることが多かった。JACICクラウドを用いて複数の自治体の首長が同時に参加することで情報を一括して共有でき、相当の時間短縮を図れる。

 一方、TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)が災害情報の収集・共有に利用することも想定している。TEC-FORCE専用のルームを用意してウェブ会議やファイル共有機能を活用し、隊員が撮影した写真などを地図に落とし込み、遠隔の関係者と共有する。

 自治体を支援するリエゾン(現地情報連絡員)も活用することで、国と自治体の災害対策本部が簡単に情報共有できるようになり、必要な情報や意思疎通の円滑化に貢献する。タブレット端末1台で情報共有できるため、財政や人材が限られる自治体の関心も高まっている。

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