発注者の生産革命 デジタルツインと新現場力(2)3次元管内図と統合モデル | 建設通信新聞Digital

5月9日 木曜日

B・C・I 未来図

発注者の生産革命 デジタルツインと新現場力(2)3次元管内図と統合モデル

【事業調整、施設管理を高度化/情報集約してビッグデータに】
 日本建設情報総合センター(JACIC)が、発注者の業務改革の切り札として開発したJACICクラウドの中核を担うのが『3次元管内図』だ。発注者の管理エリアをまるごと3次元化し、インフラ施設のさまざまなデータを体系的に集積して土木分野のデジタルツインを実現する。国土交通省の地方整備局など“発注者のi-Construction”となる3次元管内図の能力を探る。

 デジタルツインの運用で重要な役割を果たすのが、設計者や施工者が納品するBIM/CIMデータだ。JACICの尾澤卓思理事は「建設生産システムにおける発注者の主な仕事は、設計者や施工者などとともに行うプロジェクトマネジメントと施設管理の2つ。i-Constructionが進んだことで受注者から上がってくるデジタルデータを事業調整や施設管理にうまく活用することが重要だ」とポイントを指摘する。

 JACICでは、BIM/CIMやICT施工を通じて発注者の「新現場力」を構築するため、▽公共調達関連業務を簡単・便利に▽事業プロセス管理を上手に、スピーディーに▽維持管理、行政管理をレベルアップ、スマートに▽災害対応、復旧措置を迅速、確実に▽情報、データを使いこなせる現場に–の5つの目標を挙げる。

 これを実現する3次元管内図は、国土地理院が提供している3次元地図に河川や国道などのBIM/CIMデータを統合し、サイバー空間の3次元モデルとフィジカル空間のデータを連携させる。例えば現場に設置した360度カメラの画像や映像をウェブ会議で共有することで即時性、同時性を兼ね備えたマネジメントを可能にする。

デジタルツインの実現


 その結果、JACICの目指す「人の移動を減らす」「データの利活用を可能にする仕組みの構築」「現場技術者が新現場力を身につける」の3つを実現し、特に最も効率が悪かった「移動」の改善にメスを入れるとともに、統合モデルに情報を集約することで発注者の業務効率を高める。さらにインフラデータプラットフォームの役割を単なる“データ情報共有環境”から“知恵の共有環境”へと進化させることで「ノウハウのシステム化」を進め、職員の技術継承にもつなげることもできる。

 言い換えると、3次元管内図は設計や施工で作成したBIM/CIMモデルや現場の点群、写真、センサーなどのデジタルデータを集積した“ビッグデータ”であり、分かりやすい3次元のインターフェースは、必要な情報を膨大なビッグデータから引き出すためのインデックスの役割を果たす。
 例えばダムの管理事務所では、広域地形モデルにダム本体施設や付け替え道路、原石山、地すべりなどのBIM/CIMモデルを統合した3次元管内図を作成し、各モデルに測量、観測、点検の記録や地質情報、写真や図面などの属性情報を格納する。
 現地のセンサーが取得する計測データ、FRICS(河川情報センター)の河川情報など外部システムも連携できる。目的にあわせてさまざまなデータを組み合わせて業務を効率化するとともに、そのデータ活用を標準化することで業務水準を向上させる。
 工事事務所ごとにデータの価値や組み合わせ方は異なるため、データを体系的に整理し、固有の技術やノウハウの「伝承基盤」として活用することも可能になる。

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら