【記者座談会】20年3月期決算出そろう | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【記者座談会】20年3月期決算出そろう

A 大手・準大手ゼネコンの2020年3月期決算が29日でおおむね出そろうね。
B 各社とも豊富な手持ち工事が順調に進捗し、高水準の売上高を確保した。特に大林組と鹿島は、期初に予想した売上2兆円超えを達成した。利益面では、各社とも建築の完成工事総利益(粗利)率は低下傾向にあり、工事損失引当金の計上などで前期比減となった企業が多い。ただ、「まだ粗利は高い水準を維持している」という声が多く、新型コロナウイルスの感染拡大の影響も3月まではほとんど受けなかったため、好調を維持したと言えるだろう。
C 21年3月期の見通しについては、コロナの影響で厳しい状況だ。大手・準大手の多くが4月下旬から工事を中断したが、ゴールデンウィーク明けには再開したほか、公共工事の発注は堅調とみられ、緊急事態宣言が徐々に解除されるとともに「国内の影響は限定的」との見方が広がっている。一方で、海外では多くのゼネコンが進出しているシンガポールで長期の中断を余儀なくされるなど、受注・売上・利益とも大きな打撃を受ける見通しだ。もともと21年3月期は、好調な建設需要が“踊り場”に入るとみられており、そこに海外の影響が重なって厳しい業績予想となっている。
B 国内でも、大型再開発など首都圏を中心とした豊富な建設需要は底堅いとみられているものの、コロナの第2波、第3波の懸念が払拭(ふっしょく)されたわけではなく、民間投資が計画見直しや延期される案件も出てきている。不安要素の多い滑り出しとなっているが、社会変化に伴う建設需要の変化に対応する姿勢が重要だね。

東亜建設工業が開催したオンライン決算説明会。新型コロナの影響で説明会をオンラインで開催する企業も多くなった

◆設備、道路も好調 今期の見通しは困難

A 設備工事会社はどうか。
D 電気設備工事大手5社のうち、個別の受注高は関電工、九電工、ユアテックの3社が増加し、関電工、きんでん、トーエネックの3社が増収営業増益だった。電力関連投資は抑制基調が続いているが、都市圏再開発やインターネット取引の普及に対応した物流施設の建設需要などを取り込んだ。今期の業績予想は、全社がコロナの影響で合理的に業績予想を算出できないとして未定だ。
E 情報通信設備工事大手の3社は、複数の地域通信設備工事会社の経営統合で事業規模が拡大し、受注、売上高とも2桁増だった。21年3月期は、コムシスホールディングスが前期をやや下回ると見込む。コロナの影響は現段階で限定的と仮定した。協和エクシオは若干の増収増益を見込んだ。影響が明らかな事項だけを織り込み、影響は軽微と想定した。ミライト・ホールディングスは前期業績の維持を目指す。ただ、一部工事の完工遅延、受注環境悪化などの影響は、業績予想に織り込んでいない。
A 道路舗装はどうか。
F 道路舗装大手8社は7社が売上増、営業利益も過半数の5社が増益となった。唯一減収減益の鹿島道路も「計画目標値は達成しており、十分な水準を確保できた」と振り返り、各社とも好調だったといえる。特に、大成ロテックは順調な繰越工事の消化や生産性の向上で03年3月期以来の高水準の結果を残した。受注高は6社が増加した。NIPPOと世紀東急工業は大型工事の受注を好調の要因に挙げている。
G 21年3月期の見通しについてはコロナの影響を加味して予測を出した企業は減収を見込む声が多く、また経済の停滞などによって受注が減少することが懸念されている。原油価格の低下は「一時的なもの」と見る向きが大勢で、明るい兆しとまではなっていない。

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