【気象・海象を見極める】チーム一丸で挑む「都市計画道路殿町羽田空港線ほか道路築造工事」 | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

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【気象・海象を見極める】チーム一丸で挑む「都市計画道路殿町羽田空港線ほか道路築造工事」

 わが国の成長戦略をけん引するプロジェクトのかぎを握るインフラ整備である「都市計画道路殿町羽田空港線ほか道路築造工事」(事業施行者=東京都、川崎市、国土交通省。発注者=川崎市)が着実に歩みを進めている。施工者の五洋建設・日立造船・不動テトラ・横河ブリッジ・本間組・高田機工JVは、橋梁新設では珍しい異業種の甲型JVを組み、チーム一丸で難工事に当たる。五洋建設の陶山健太現場代理人は、「台船で桁を架けるため、気象・海象状況を見極めることが重要なポイント」とする。

陶山現場代理人


 羽田空港の拡張や国際線ターミナルの整備で生まれた地域で羽田エアポートガーデンなどの整備が進む羽田空港跡地地区と、多摩川を挟んで対岸の殿町地区で進むオープンイノベーション拠点「キングスカイフロント」を結ぶインフラが「羽田連絡道路」だ。多摩川を渡る総延長840mの橋梁を主とする道路で、長さ602mの鋼3径間連続鋼床版箱桁橋と長さ72mの鋼2径間連続鈑桁橋などで構成する。

 航空法の高さ制限によって大型の起重機船が使えないため、主径間と川崎側の径間で潮位を利用して桁を架ける台船架設工法を採用。生態系保持空間のため立ち入りできない川崎側の径間では、羽田側からトラベラークレーンによる張出し工法、川崎側から桁の吊り上げが不要な特殊な送出し工法で、それぞれ桁を伸ばして中央でつなげる。

奥が羽田エアポートガーデンと羽田空港、右が殿町地区。 橋梁上のクレーンが張出し架設用のトラベラークレーン


 海洋土木を得意とするゼネコン、張出し・送出し架設の特殊な知見・技術を持つ鋼橋メーカーなどがお互いの高度な技術を集結させる必要があり、施工範囲を分離しない甲型JVを組んだ。「作業がスピーディーに進められる」という良さもあるものの、「業種が違うため、少しずつ各社の文化やルールが違い、すり合わせに苦労した」と明かす。だが着工から3年が経過、「良いチームワークがとれてきた。苦労した分、団結力が生まれ、良さを出し合えている。他工種とも仲間として仕事ができ、技術者冥利(みょうり)に尽きる」と笑顔を見せる。

 桁の台船架設では、桁を5ブロックに分け、千葉県富津市の地組ヤードで組み立てた桁を4000t積台船に載せ、架設現場まで運び、潮位を利用して架設する。「ヤードで台船に積み、架設するまで約1週間が一連の作業で、途中で止められない。1週間の気象・海象状況を見極めることが最も重要になる」という。最初の架設は2019年9月に実施したものの、その後、台風15号、19号に見舞われ、航路が土砂で埋まった。約6カ月かけて13万m3もの土を浚渫し、20年4月に2回目の架設が実現。3回目の主径間中央部の桁は桁を吊り上げる方法を採用した。

 風や潮で台船が流されることもあり、水上工事特有の“潮を読む”ノウハウを踏まえて作業計画を立てるのが成功の重要なポイントだ。10日の4回目の架設では「船長も含めて、約3年でこの場所の潮の動きも分かってきた。台船が潮位の低下で流されることを計算し、まず上流に50cmほど出してから徐々に架設した」と明かす。高所作業が多いことによる墜落・転落の防止にも特に気を配る必要があるほか、「水上工事なので、油の流出にも気を付けなければならない」と配慮事項は多岐にわたる。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言時には、数日の中断時に事務所内の席配置変更や朝礼・KYの簡素化といった対策を施し、作業を継続した。これからは「マスクを付けて作業することで熱中症が心配だ。マウスガードの配布など、工夫して対応している」という。

 ゼネコンや鋼橋メーカーの技術の粋を集めたビッグプロジェクト。陶山現場代理人は、安全を第一としつつ、「地域のイベントなどさまざまな機会を捉え、若い人にプロジェクトの醍醐味(だいごみ)を感じてもらい、建設業の魅力を伝える」ことも重要な役割と感じている。

架設を完了し、離脱する台船(下)

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