【相互理解・協働を大切に】金沢~敦賀間が建設最盛期の北陸新幹線 今後のポイントは? | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【相互理解・協働を大切に】金沢~敦賀間が建設最盛期の北陸新幹線 今後のポイントは?

 北陸新幹線(金沢・敦賀間)の建設が最盛期を迎えている。工事発注を担当する鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)の大阪支社長に4月1日付で就任した堀口知巳氏は「開業までプロジェクトをしっかりと導くことがわたしの最大の使命」と語り、2023年春の開業へとまい進する中、受発注者間の「相互理解」と「協働」がかぎを握ると考えている。堀口支社長に、北陸新幹線建設を始めとする今年度の取り組みや事業のポイントについて聞いた。

鉄道建設・運輸施設整備支援機構大阪支社長 堀口知巳氏


 「北陸新幹線は計画がスタートした昭和40年代までさかのぼると、半世紀にわたるプロジェクト。その総仕上げの指揮に当たることになり、まさに身の引き締まる思い」と就任の抱負を語る。

 同機構の20年度新幹線予算4430億円のうち、6割超の2750億円を北陸新幹線(金沢・敦賀間)が占めている。12年6月の着工から8年を経て、支社所属の職員数は過去最大の360人規模まで拡大。進行中の現場数も100を超えた。その上で「今年度は現地工事の主体が土木から建築へとスイッチする節目の年になる」と説明する。

 6月時点の土木工事の進捗率は約78%。石川県域は約91%で「ほぼピークは超えた」状態だ。一方の福井県域は約71%。ハイライトは北陸自動車道の上空に橋梁桁をかける作業。また新北陸トンネルや深山トンネルの貫通も控えている。「ことしが正念場になる」と力を込める。

 建築工事のメインである駅舎工事は石川・福井の6駅全てで発注手続きが完了し、無事契約に至った。秋以降工事が本格化する見通しだ。4月からはレールの敷設工事も始まり、電気や機械などの設備工事も順次動き出す。「土木・建築、軌道、設備と輻輳(ふくそう)する作業を効率よく、かつ安全に配慮しつつ着実に進めなくてはならない。まだまだ気を抜くことは許されない」と表情を引き締める。

 金沢・敦賀間建設に続く敦賀~新大阪間の延伸計画についても着々と準備が進む。「4月に調査部を設置したところ。地元からは切れ目のない事業化に大きな期待が寄せられている。まずは来年度をめどに環境影響評価報告書の準備書を取りまとめる」方針だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、公共交通の利用者数が急激に落ち込んだ。JRを始め、鉄道事業者は各社とも厳しい状況にある。「鉄道整備に携わる者の1人として、新幹線の利用者数が激減したことは非常にショックだった。だが新幹線は地域と地域を結ぶ幹線交通であり、その役割自体が大きく揺らぐことはない」と言い切る。

 円滑な新幹線整備のかぎを握るのは現場との「相互理解」と「協働」だと考えている。資機材の不足や人手の確保、安全対策、そして新たに求められるようになった3密(密閉・密集・密接)への対応。時間が限られる中、これまで以上に受発注者間の一体感が重要になる。「各受注者にはこれまでも本当によくやっていただいてきた。わたしたちはこれからも現場で働く皆さまと目標を共有しともに歩む気持ちで臨む」

 前職は技術企画部長で、在来線整備の支援にも携わっていた。大阪出身だけに「なにわ筋線」や「阪急新大阪連絡線」といった関西の鉄道プロジェクトの動向も非常に気になるという。「技術的な観点から何かお手伝いができれば」と先を見据える。

23年開業に向け着々と工事が進む(写真は敦賀駅付近)


 (ほりぐち・ともみ)1992年3月京大大学院工学研究科修了後、同年4月日本鉄道建設公団(現鉄道・運輸機構)に入る。九州新幹線建設局長、東京支社長、技術企画部長を経て4月から現職。
 「地元での勤務は初めて」。休日には散歩を兼ねて懐かしの母校を訪ねるなど、単身生活を前向きに楽しむことを心掛ける。66年5月10日生まれ、54歳。

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