【記者座談会】リニア新幹線静岡工区/小池都政の2期目スタート | 建設通信新聞Digital

5月15日 水曜日

公式ブログ

【記者座談会】リニア新幹線静岡工区/小池都政の2期目スタート

A リニア中央新幹線をめぐる動きを取り上げたい。未着工となっている静岡工区が大きな課題となっている点は、依然として変わらない。10日には、国土交通省の藤田耕三事務次官と静岡県の川勝平太知事が静岡県庁で会談した。
B 大井川の水資源問題などから、県はトンネル掘削工事の着手を認めていない。しかしいま、議論の焦点となっているのは、その前段階であるヤードや坑口などの準備工事だ。「準備工事はトンネル掘削工事と一体」と主張する県との議論は平行線をたどり、今回も目に見える大きな成果は得られなかった。
C 大井川流域の10市町が反対の立場を示していることを考えても、県はそう簡単に立場を崩すことはできないだろう。いまさらルート変更などは非現実的としても今後、解決に向けた糸口を見いだせないものだろうか。
D 今回の会談は、成果がなかったとは言い切れないだろう。次のステップが少しずつ見えてきた。国交省側は、流域市町との対話に関心を示している。流域が抱える不安材料をヒアリングし、その解決に向けて具体的な対応を進めたい考えだ。この点は、次の展開に向けた重要なステップといえるかもしれない。難易度の高い交渉は、少しずつ進展するものだ。
C 一方、2027年のリニア開業に足並みを合わせて完成を目指している駅周辺開発プロジェクトなどは数多い。開業延期となった場合に、こうしたプロジェクトがどのような影響を受けるか、その点も未知数だ。
B 東京都内では、品川駅周辺エリアなどが代表格だろう。リニア開業を見据えながら、官民双方による複数の開発計画がある。とはいえ都心エリアはもともと開発需要が高く、リニアが延期となったとしても致命的な痛手には至らないだろう。それに比べ、より大きな影響を受けるのは、他県のリニア駅周辺開発かもしれない。改めて、リニア事業の波及効果の大きさを考えさせられる。

駅周辺開発などリニア中央新幹線の 波及効果は大きい

◆新型コロナが影響、都工事4割減少

A 小池百合子東京都知事が2期目に入った。新型コロナウイルス対策、水害への備え、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた調整など、課題は山積している。
E 五輪に関しては、IOCや東京五輪組織委員会などが簡素化した大会計画の大枠を検討しているものの、世界全体の新型コロナ感染者数が1300万人を超えて終息の兆しが見えない中、開催までの道のりは決して平坦ではない。東京都は、五輪のレガシーを次代の都市づくりの柱に据え、まちづくりの将来像の策定を進めている。このため今後の大会開催に関する議論の推移を注意深く見守る必要があるだろう。
F コロナの影響では、4-6月の第1四半期の東京都発注工事が、前年同期比で4割程度も落ち込んだ。開札ベースでの件数であり、もちろんすべてがコロナの影響とは言い切れない部分はあるものの、工事発注手続きそのものに影響が出た案件もある。
E 新規公告の一時停止や既存事業を縮小するといった対応は異例でもある。財務局の発注工事や、学校側がコロナ対応に追われた教育庁の工事は大きく減少した。建設局や水道局、下水局などのインフラ部門でも減少している。
F 感染拡大防止のため、工事発注が先送りになるだけであれば、痛手は比較的少ない。しかし地方自治体の間では、コロナ対策の財源確保に向けて、庁舎やインフラなどの大型事業の計画そのものを中止する動きもある。ここにきて感染者数が再び増加傾向にあり、今後しばらくは予断を許さない状況が続きそうだ。

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら