【住民の暮らし守る】北九州市・昭和町雨水貯留管建設工事 浸水被害のリスクを防ぐ技術とは | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【住民の暮らし守る】北九州市・昭和町雨水貯留管建設工事 浸水被害のリスクを防ぐ技術とは

 近年、局地的な大雨が頻発し、全国各地で浸水被害のリスクが高まっている。北九州市では、2013年7月豪雨により小倉都心部で54戸の床下浸水が発生した。今後想定される浸水被害の軽減に向けて、市は昭和町雨水貯留管建設工事を進めている。飛島建設・松山建設・宮本建設工業JVが施工担当する現場を取材した。 雨水貯留管は、既設の下水道管に流しきれない雨水を一時的に取り込み、降雨後にポンプでくみ上げ処理施設に排水する。市は、「北九州市小倉都心部浸水対策推進プラン」を15年2月に作成し、柱の1つとしている下水道整備の一環として雨水貯留管の整備を進めている。

シールドトンネル内部


 昭和町雨水貯留管は、白銀公園から香春口北交差点付近までの長さ1467m、仕上がり内径3mで、小学校の25mプール26杯分に相当する約9500m3をためる。工事は日本下水道事業団が担当している。

 掘削は市街地の地上部に影響を与えないよう泥土圧シールド工法を採用している。シールド機は日立造船製作で、全長約8800mm、外径3640mmとなる。18年8月に起工し、19年8月までにシールド機を完成させ、同11月に発進した。

 地下12mから発進し、都市高速道路や国道3号を横断しながら北上する。大手町馬借1号線の合流付近で東に直角方向(半径40m)に曲がり、同線を進み北九州モノレールを過ぎて香春口北交差点付近の地下17mに到達する。地質は頁(けつ)岩、砂岩、礫(れき)岩など入り組んでいるため、軟岩用のビットで掘り始め、地質やビットの摩耗状況に応じて岩盤用と軟岩用のビットを3回交換する。掘削した部分にはRCセグメントを組み立て雨水管を構築していく。

発進基地内。正面に据え置きされているのがRCセグメント


 現在の進捗率は43%で、発進立坑から340mの国道3号の横断地点まで到達した。国道3号の直下は、電気やガス、水道などのライフライン、NTT西日本の通信ケーブル「とう道」が走っており、これらの間を抜ける難工事となる。

 1日当たりの掘削延長は平均して7mだが、国道3号直下では2mにスピードを落とし、土圧バランスや線形管理などに細心の注意を払い施工している。管理に当たっては、現場付近の共同住宅の1室を借りて設置したトータルステーションを活用している。

 地上には都市の重要な道路構造物、地下にはライフラインが走り、急曲線部も控えている。同JVの佐藤邦男作業所長は「シールド技術の粋を集めた工事。キャリア35年の中でもトップクラスに入る難工事だ」という。

 2交代の24時間態勢で施工し、4週6休を確保している。工事進捗に新型コロナウイルス感染症の影響はないという。21年4月に香春口北交差点に到達する予定で、その後、マンホール設置などを進め、22年3月15日の完成を目指している。佐藤作業所長は「第3者の災害防止に十分配慮しながら、浸水被害により住民が苦しい思いをしないで済むよう1日も早い工事完成を目指す」と意気込んでいる。

佐藤所長

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