【書籍】すごさを知るほど人生が豊かになる 『うんちはすごい』執筆に込められた想いとは | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【書籍】すごさを知るほど人生が豊かになる 『うんちはすごい』執筆に込められた想いとは

 うんちやトイレの“すごさ”に光を当て、日本の排泄文化をアップデートするために執筆した『うんちはすごい』。著者の加藤篤日本トイレ研究所代表理事は「1日に何度もお世話になるのに、トイレやうんちのことは知らないもの。そのすごさを知れば知るほど人生が豊かになる。ひいては日本のものづくりにも影響する」と語る。建設現場でも仮設トイレの“常識”を覆す「快適トイレ」が普及し、トイレに対する関心も高まっている。排泄の大切さについて聞いた。

NPO法人日本トイレ研究所代表理事 加藤 篤氏


 本書は、タブー視されるうんちやトイレの素朴な疑問や最新知識を分かりやすく解説するため、うんちの成分、トイレの最新テクノロジー、バリアフリー、医療、災害、仮設トイレなど多岐にわたる話題を収録した。加藤氏は「うんちは見ない、見せない、話題にしない--まるでブラックホールのように果てしない“謎”に包まれた存在」と指摘する。臭いものにふたをするのではなく、ふたを開けるかぎの役割を果たすのが本書の使命となる。「家庭や職場で日ごろから話題にしてほしい。そのための知識や情報を詰め込んだ。ユーモアを交えて話してほしい」と期待する。

 日ごろから話題にしなければならないのは「困ったときにこそ正しい知識が必要」だからだ。「災害や病気はいつ来るかわからない。排泄を話題にしにくいと、災害や調子の悪いときも困った状態が続いてしまう。まずは声に出すことが大事だ」と強調する。

 特に災害時は水や食料に目が行きがちだが、排泄こそ重要になる。トイレが不衛生になると感染症などが起きやすく、避難所の運営が乱れ、「トイレパニック」も発生する。もめごとが起きやすく食事や医療にも悪影響を及ぼす。「トイレがきれいで排泄がうまくいくことが復旧・復興をスムーズに進めるポイントだ」という。

 建設現場に設置される仮設トイレは「ものづくりに従事する人は汚れに対してシビア。トイレがきれいな現場は事故が少なく納期も早いはず」と喝破する。現場を清潔な状態にするには働く人の意思が問われるが、それをシンボリックに表すのがトイレだ。

 トイレの重要性は茶の湯の作法に明確に表れる。「千利休は茶室につながる路地の見える位置にトイレ(雪隠)を配置した。最も汚れやすい場所がきれいなら、そのほかの部分もきれいなことが人目でわかる。この“雪隠拝見”は茶道の重要な心得であり、おもてなしの心を表すトイレの大切さは現場の仮設トイレも同じ」と考える。

 そして、安全第一の現場で最大限のパフォーマンスを発揮するには、「しっかり食べ、水分を補給し、しっかり出すことが大切。トイレが不衛生だと水分を控えて排泄を我慢する。そうすると熱中症など体調不良につながる。最高の仕事には最高のトイレが必要だ」と指摘する。

 国土交通省は、働き方改革の一環として仮設トイレの質を高める「快適トイレ」を原則化した。この取り組みを後押しするため、日本トイレ研究所は「快適トイレ認定マーク」を発行している。星マークの数で格付けし、トイレの質を見える化した。

 また、現場のトイレが変われば避難所に持ち込まれる仮設トイレの質の向上にもつながるという。「現場で快適トイレの導入が進めば、それが地域に流通する。建設業の地域貢献になる」と説く。

『うんちはすごい』イースト・プレス 840円+税

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