【BIM未来図・大和ハウス工業②】設計BIM化は前倒し達成 目標と目的の共有で一体感 | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

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【BIM未来図・大和ハウス工業②】設計BIM化は前倒し達成 目標と目的の共有で一体感

 2018年から始まった大和ハウス工業の完全BIM化に向けた建築事業の生産改革は、着実な進展を見せている。先行する設計部門では19年度末時点で、意匠設計のBIM導入率は49%となり、目標の4割を超えた。直近2カ月では83%と導入率が一気に高まりを見せる。構造設計については既に19年度末で83%まで拡大し、直近では99%と、ほぼ完全BIM化に移行した状況だ。19年度末で33%にとどまる設備設計も直近では44%まで押し上げている。

社内研修は2年間で延べ2,700人に達する


 建設デジタル推進部の宮内尊彰次長は「設計者自身がBIMを使いこなしたいという自発的な意識が、われわれへの問い合わせ状況に見え隠れしている」と明かす。設計部門は意匠800人、構造設計は230人、設備280人の計1310人体制。このうちオートデスクBIMソフト『Revit』のユーザーは1000人まで拡大した。当初は基本操作の問い合わせが中心だったが、最近はアドインツール、集計表、ファミリなど業務ツール関連の質問が増え、社内のスキルがステージを1つ上げたことを物語る。

 同社は20年度末に設計部門の完全BIM化を目標に位置付けているが、意匠設計と構造設計については前倒しで100%に到達できるとみている。やや遅れている設備設計も20年度末目標を40%から75%に上方修正した。オートデスクの『Revit MEP』への本格導入にも踏み切る予定で、意匠・構造・設備の統合BIMモデルプロジェクトを各地域で最低1件はトライするよう方針を出している。設計部門の完全BIM化に合わせて統合モデルの検証も本格化させる計画だ。

 BIM導入率の拡大は、建設デジタル推進部が講師役となり、精力的に進めている社内研修の成果でもある。意匠、構造、設備、見積、工事の部門ごとにメニューを取り揃え、これまでの2年間で延べ2700人が参加した。BIMの熟練度を引き上げるだけでなく、管理職レベルを対象とした責任者研修も実施中。新型コロナウイルス感染症対策でオンライン研修もスタートした。

 大手ゼネコンなどと比べると、BIMの導入は後発の同社だが、導入拡大のスピードは早い。オートデスクと包括的なパートナーシップ契約を結び、わずか3年で設計の完全BIM化を達成する見通し。川上段階から川下段階までBIMを一気通貫でつなぐことを前提に改革を進めているだけに、最上流に位置する設計部門のBIM化が将来の命運を握ることは間違いない。オートデスク側でパートナーシップの責任者を務める稲岡俊浩エンタープライズビジネスマネージャーは「目標と目的を共有し、組織が一体となって取り組んでいることがスピード感につながっている」と分析する。

 設計部門を統括する南川陽信上席執行役員は「会社としては川上から川下までトータルでBIM化を実現してこそ大きなメリットを得られる。BIM導入の負荷が大きい設計部門は、実際に得られる果実は少ないが、彼らが予想を上回るスピードで浸透してくれていることが組織をけん引している」と説明する。これからは施工段階の導入フェーズに入る。「ここを乗り越えることが成長への大きな一歩につながる」と焦点を絞り込む。

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