【BIM未来図・大和ハウス工業⑤】設計者のテレワーク環境構築 半年以内に1000人以上を対象 | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【BIM未来図・大和ハウス工業⑤】設計者のテレワーク環境構築 半年以内に1000人以上を対象

 大和ハウス工業が、包括契約を結ぶオートデスクからデジタルワークプレイス(DWP)構築について提案されたのは2019年8月のことだ。当時は1年後に東京五輪が開催予定で、東京を中心に首都圏内では五輪期間中の約3週間は出社が難しく、現場も場所によっては施工が満足にできないことが想定され、出社しなくても業務に支障がないようにテレワークなどの対策が求められた。既にプロジェクトの情報共有はオートデスクのクラウドサービス『BIM360』を使っていたが、テレワークに移行すれば、通信料も大幅に増額し、プロジェクト関係者のパソコンスペックも一定レベルまで高めて取りそろえる必要もある。コスト面も含めた最適化とは何かを議論してきた。

テレワーク実現への方向性


 しかし、その状況は新型コロナウイルスによって一変した。建設デジタル推進部デジタル先端技術グループの堀永定己グループ長は「五輪のために準備してきた対策が、新型コロナ対策として機能する結果となった」と説明する。19年10月にテレワーク時のネットワーク環境調査を実施済みで、緊急事態宣言を受けて、設計部門はテレワークに移行した。社外とのやり取りが中心になるため、テレワークでも業務に支障を来さない上、BIM360によるクラウド環境も整っていたことから、ロースペックのパソコンでも問題なく作業できることを確認できた。

 4月から5月の緊急事態宣言下で、テレワーク率90%を実現した設計部門のスタッフは全体の65%となり、一定の成果を納めた。同社は4月20日から5月10日までの16日間は全現場を完全閉所し、技能労働者に補助を出すなどの取り組みも進めてきたが、施工現場では32%にとどまった。同部の宮内尊彰次長は「施工現場のテレワークは難しい面もあるが、設計部門についてはDWPの環境を構築できる」と手応えを口にする。

 同社は、完全BIM化を出発点に、社を挙げた事業全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)に突き進む。社内のデジタル化は成長へのバロメーターとなるだけに、宮内氏は「DWP環境の構築は避けては通れない」と続ける。現在の設計部門ではテレワーク率目標50%に対して、8割程度で推移しているが、デスクトップPCを自宅に送って当座をしのいでいる状況だ。4月からは設計部門を対象にしたBIMのウェブ研修もスタートし、今後は全国の現場所長へのBIM研修などもオンラインで進める。

 堀永氏は「施工現場には高性能なパソコンが配置されていないこともあり、BIM360やRevitの操作スキルが一定程度のレベルにならなければ、生産性向上の手段であるはずのBIMが単なる手間として受け止められてしまう」と危惧(きぐ)している。そうした状況も踏まえ、テレワークでも技術者が快適な動作環境で仕事や研修ができるよう、向こう半年以内に1000人以上の技術者に向けてDWP環境を提供する計画だ。

 現場へのBIM普及には「建設デジタル推進部の支援が不可欠であり、場合によっては外部委託する形で教育を徹底する」必要性も訴える。その先には協力会社のBIM教育も見据えている。施工現場のデジタル化は同社の成長の道筋として欠くことのできない重点テーマであり、社内ではオートデスクの新たなソリューションを活用したモデル現場も立ち上がった。

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