【1+1を2以上に】伊丹市の統合新病院整備工事設計 久米設計が目指す施設の姿とは | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【1+1を2以上に】伊丹市の統合新病院整備工事設計 久米設計が目指す施設の姿とは

 兵庫県伊丹市の市立伊丹病院と公立学校共済組合が実施した「(仮称)統合新病院整備工事設計委託業務」の公募型プロポーザルで、久米設計・浦野設計JVが特定された。久米設計は「統合による1+1を2以上にできるような病院施設とする」(高橋創設計本部第2医療福祉設計部統括部長)ことをテーマに掲げ、高度な医療と健診を展開できる施設計画を提案。患者や職員など病院を利用するあらゆる人びとが快適に過ごせる空間づくりを目指していく。

左から尾崎主管、佐藤副本部長、高橋統括部長


 この事業では、市立伊丹病院と公立学校共済組合近畿中央病院との統合新病院を、現伊丹病院敷地(昆陽池1-100ほか)に建設する。事業費は約409億円と見込み、病床数は約600床を計画する。

 久米設計は病院設計に力を入れており、これまでに全国で約200病院計6万床もの実績を積み重ね、関西でも数々の大病院を手掛けてきた。「その中には統合病院での設計実績もあり、こうしたノウハウでお役に立てるのではないか」(佐藤基一業務本部副本部長)と考え、このプロポーザルへの参加を決めた。

 プロポーザルの場合、東京本社にある2チームの医療福祉設計部と、当該地域の支社の病院施設担当者が連携して対応を進めていく。今回も大阪支社が窓口となり、医療福祉設計部を中心に20人程度が携わり提案をまとめていった。

 「新型コロナウイルスの影響で会議などしづらい状況だったが、ウェブ会議システムを使い、頻繁に打ち合わせを行った」(尾崎亮一設計本部第2医療福祉設計部主管)と振り返る。

 提案づくりでは、どう工期を短縮できるかが大きな課題となった。施設は2棟構成で総延べ5万6000㎡。通常なら東棟を建設し、完成後に既存施設を解体してそこに西棟を建設していく流れとなる。

 同病院は2025年度の開院を目指しており、単に工期を短縮するだけなら計画していた地下をやめるという選択肢もある。しかし「工期のために施設の使い勝手などを犠牲にしない」とし、東棟の建設中から既存解体に着手し、西棟の建設工事を前倒す工程を作成。施設計画や構造などを変更することなく、工程の調整だけで当初48カ月かかると見込まれていた予定工期を6カ月短縮した。

 施設内容は高度急性期病院における「医療機能」と健康管理施設における「健診機能」の充実を図るとともに、将来的な可変性、柔軟性を強く意識したものとし、ロングスパンの採用をはじめ、用途変更や医療ニーズの変化に対応しやすいよう配慮している。また、あらゆる面からすべての患者・スタッフの快適性も追求。1フロア外来、医療サービスと患者がクロスしない動線といった工夫のほか、東棟と西棟をつなぐ場所にアメニティ施設的な位置付けの「くすのきホール」を設置し、一般市民向けに健康情報の発信などを行うアイデアを提案している。

 さらに、看護効率を高めることなどを目的にウイング型病棟を採用し、自家発電など災害時に機能を止めない工夫も取り入れた。

くすのきモール内観


 今後の設計業務については、「新型コロナ対応などで施設構成を見直す可能性もあるが、動向を見ながら柔軟に対応する」(高橋統括部長)方針で、「発注者をはじめ関係者と緊密に連携し、高いレベルの医療が提供できるような施設をつくりあげ、市民らに喜んでもらえるようにしたい」(佐藤副本部長)と力を込める。

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