【対話の設計】内藤建築事務所の向日が丘支援学校改築設計 提案が高評価を受けたかぎとは? | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【対話の設計】内藤建築事務所の向日が丘支援学校改築設計 提案が高評価を受けたかぎとは?

 京都府が実施したWTO対象の「京都府立向日が丘支援学校改築工事基本・実施設計業務」の公募型プロポーザルには10者が参加する激戦となり、100点満点中89.52点という極めて高い総合点を獲得した内藤建築事務所が特定された。常に『対話の設計』を心掛け、子どもたちに生きる力を養ってほしいとの思いを込めた提案は、府から「特別支援学校の特性・現状を十分理解している」と高く評価されている。

左から小滝さん、山田部長、岩崎部長


 同事務所は『医療福祉の内藤』として知られ、医療・福祉施設などで数々の設計実績を誇るが、幼稚園から大学までの教育施設にも力を入れている。特に支援学校については「医療福祉施設でのノウハウを生かしやすい」(岩崎邦光設計部部長)こともあって積極的に取り組んでおり、関西でも本社がある京都府下のほか、滋賀県や和歌山県でも進行中の案件があるという。

 今回のプロポーザルでは総勢13人でチームを組んだ。山田俊二企画部部長が全体のまとめ役となり、岩崎部長がそれをサポートするダブル管理者体制とし、企画営業部の小滝亮氏が発注者との窓口を担った。意見が偏らないよう本社はもちろん、支社のスタッフも含め、テレビ会議システムを通じて議論を重ねていった。

 提案のかぎとなったのは「オープンとクローズをどう設定するか」(山田部長)。施設全体のテーマを『地域に寄り添い、地域から力を得る、地域の学校づくり』と設定し、みんなの広場やアリーナなど地域に開放する施設を提案しているが、一方で教育スペースなど開放しない部分も必要で、このバランスや施設配置に頭を悩ませた。

 施設内は中庭を複数配置した形状としているのが特徴で、回遊のなかでさまざまな子どもたちが出会うことを意図するとともに、生徒の個性に応じてさまざまなタイプの居場所をつくっている。

鳥瞰図


 また、隣接地に長岡京市の共生型社会福祉施設が計画され、その施設内容がはっきり固まっていないものの、この施設との連携をしっかりと位置付けたことも選定の大きなポイントとなった。

 「学校の卒業生が隣の共生型社会福祉施設で働くこともイメージした」(山田部長)とのことで、同施設付近にみんなの広場を設置し、ひだまりモール、ソーシャルプラザ、アリーナなど地域が参加しやすい場づくりを基本に施設間の連携に配慮した。

 また、提案全体に貫かれている「社会に出て活躍できる生きる力を養ってほしい」との考えは、3階部分に配置したシティステイスペースにも反映されている。この空間は「まちやホテルと同じような、修学旅行のような非日常の体験ができるようにしたい」(岩崎部長)と、ホテルのフロントを体験できる仕掛けも検討している。

 今後はプロポーザルのチームがそのまま基本・実施設計業務を担当する。業務期間は2022年2月15日まで。想定規模は校舎棟が延べ約1万1700㎡、体育館が延べ約1000㎡、プールが25m×5レーンなど。「業務に着手し、プロポーザル時点では分からなかった課題なども分かってきたが、適宜柔軟に対応していきたい」(小滝さん)とし、「さまざまな意見に耳を傾けながら設計を進め、地域に愛され、利用者に喜んでもらえる施設にしたい」(山田部長)と意気込みを語る。

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