【アントニン・レーモンド】実像・設計作法に迫るトーク・セッションがスタート@チェコ大使館 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【アントニン・レーモンド】実像・設計作法に迫るトーク・セッションがスタート@チェコ大使館

貴重な映像も披露されたトークセッション

 わが国の建築の発展に多大な影響と功績を残したチェコ出身の建築家、アントニン・レーモンド。その長い創作活動の中で、特に戦後に焦点を当て、ともに働いた日本人建築家らの目を通して、建築家として、また人間としての実像や設計作法に迫ろうという、ユニークな試みがスタートした。日本におけるチェコ文化年の一環として、チェコセンター東京が開催する連続トークセッション「5×アントニン・レーモンド クローズアップ」がそれ。21日には社長秘書として長く仕え、家族ぐるみの親交もあった五代美子さんが登壇。アントニンを生涯にわたる協力者として支え、自らも優れたデザイナーだった妻ノエミとのエピソードなども交えながら、その人となりを語った。 2015年にプラハのヤロスラフ・フラーグネル・建築専門ギャラリーで開催され、話題を呼んだ展覧会「7×アントニン・レーモンド」が17日からチェコセンター東京で開幕。連続トークセッションはその関連イベントとなる。
 早大国際教養学部で教鞭を執るヘレナ・チャプコヴァー博士と、チェコセンター東京の初代所長を務め、現在はチェコ蔵を主宰するペトル・ホリー氏をモデレーターに、レーモンドと同時代を生きた協力者たちの「貴重な証言」をインタビュー形式で聞き取る。「事務所やスタッフをどう動かしていたのか。建築の専門書には出ていないような日常のリアルな姿を浮かび上がらせたい」とチャプコヴァー氏。その成果を戦後日本の建築界に果たした功績とともに、日本語とチェコ語で本にまとめ、来春には出版する予定だという。
 今後、6月16日に建築家でランドスケープ・アーキテクトの内藤恒方氏(ALP設計室主宰)、同30日に建築家の三沢浩氏(三沢建築研究所主宰)、7月21日には建築家の北澤興一氏(北澤建築設計事務所代表)がトークセッションに登場する。いずれも会場は東京都渋谷区広尾のチェコ共和国大使館映写室で開演は午後7時。無料だが事前の申し込みが必要。

展覧会は5月31日まで

 レーモンド設計事務所も共催する展覧会は、チェコの著名な建築家、ダヴィッド・ヴァーヴラ氏と研究家のイレナ・ヴェヴェルコヴァー氏がキュレーターを務め、レーモンドの建築家としての特質や作風などを当時の建築の潮流も踏まえながら多角的に分析。さらに「星薬科大学」「東京女子大学」「軽井沢の聖パウロ教会」「聖アンセルモ教会」「軽井沢の新スタジオ」「群馬音楽センター」「フィリピンの『怒れるキリストの教会』」の7作品を詳しく紹介しているほか、「南山大学」や「立教学院聖パウロ聖堂」などの模型も展示している。会場は同大使館内のチェコセンター東京展示室。会期は5月31日まで。問い合わせは同センター・電話03-3400-8129。

人間味あふれる姿を語る五代美子さん

 五代美子さんは第二次世界大戦後にレーモンドが再来日し、事務所を再開したのとほぼ同時に入所した。トークセッションでは、戦後最初の仕事となった『リーダーズダイジェスト東京支社』や、1951年から78年まで、麻布笄町(現西麻布3丁目)にあった自邸兼事務所での暮らしぶりとスタッフとの仕事の進め方などを紹介したほか、イサム・ノグチや岡本太郎、井上房一郎らとの親交にも言及した。

社長秘書として勤めた五代美子さん

 特に笄町での日常について、「デザインルームでアイデアが沸くと小さな紙に書いてスタッフに図面を抽かせていた」「外気浴が好きでよくテラスで食事していた。できることならとアントニンも家族的につきあってくれた」などと述懐。
 さらに「夫妻は軽井沢の別荘から帰るとき、よくいろいろなものを拾ってきた」という一面や、「ミセスは肌に直接触れても影響しないと言って木綿のかすり生地の服を愛用していた。障子の張り方も習っていた」などと日本の伝統文化に親しみ、実際の生活の中にも取り入れていたことを披露した。また事務所で設計実務を支えた五代信作氏との仲を取り持ち、事務所で開いた神道による結婚式では仲人も務めた人情味あふれる姿を、時にユーモアも交えながら生き生きと語った。

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