【若い世代の人材育成へ】3・11伝承ロード推進機構 福島県双葉町で防災・伝承セミナー開催 | 建設通信新聞Digital

5月2日 金曜日

公式ブログ

【若い世代の人材育成へ】3・11伝承ロード推進機構 福島県双葉町で防災・伝承セミナー開催

 3・11伝承ロード推進機構(代表理事・今村文彦東北大災害科学国際研究所長)は24日、福島県双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館で防災・伝承セミナーを開いた。震災から間もなく10年を迎える中、出席者からは教訓や経験を次世代に伝えるための人材育成の重要性を指摘する意見が相次いだ。

 セミナーは、新型コロナウイルスの感染防止の観点から一般参加はウェブ視聴限定で実施した。冒頭、内堀雅雄福島県知事はビデオメッセージで「セミナーは地域防災力の強化や災害に対する備えについて学ぶ絶好の機会となる。当県も関係機関と連携しながら震災と原発事故の記録・記憶の伝承に取り組んでいきたい」とのコメントを寄せた。

 続いて、同機構の理事を務める小沢喜仁福島大教授が「3・11伝承ロードとは何か~福島県における意義と役割~」と題して基調講演した。この中で小沢氏は同機構の目的や役割などを説明しつつ「福島や宮城、岩手では三陸沿岸を中心に大きな道路整備が進んでおり、地域を越えた取り組みがしやすくなった。今後は伝承と地域活性化が復興の根幹となる」と指摘した。

 その上で「地域の課題を解決するには10-30年という時間が掛かるだけに、若い人たちを中心にした人材育成が不可欠だ。模倣(学び)から類推、転用というプロセスを繰り返し、独創的な地域づくりにつなげてほしい」と述べた。

 この後、前川直哉福島大特任准教授をコーディネーターに迎え、清水敏男いわき市長と市岡綾子日大専任講師、高村昇同伝承館長、青木淑子NPO富岡町3・11を語る会代表の4人が「福島県における東日本大震災の伝承と実践」をテーマにパネルディスカッションした。

 清水氏は5月に開館したいわき震災伝承みらい館について「小学生の大半は震災の記憶がなく、震災後に生まれた児童もいる。みらい館に訪れることで防災や減災、克災の重要性を学んでほしい」としたほか、岩手・宮城を含めた他施設との連携による企画展の開催にも意欲を示した。

 市岡氏は、震災遺構としての活用が決まっている同県浪江町の請戸小学校校舎に関して「復興祈念公園や伝承館と連携しながら震災の教訓を知る“新しい学び舎”となることに期待したい。ただ、すでに劣化している校舎をどのように維持・保存していくかが課題だ」と語った。

 高村氏は9月20日にオープンした同伝承館に約1カ月で予想を大きく上回る1万4000人以上の来場があったことを紹介。その上で「地震・津波と原発事故という複合災害から福島が復興していく姿を伝えるため、来館者の意見を聞きながら内容の充実を不断に進めていきたい」と強調した。

 青木氏は「二度と同じ過ちを繰り返さないため、体験したことを教訓に変えて伝えるのが語り部(かたりべ)の役割だ。地域や世代を超えて語り伝える人材を育てるには、組織的な研修が必要だ」と訴えた。

 最後に前川氏は「震災伝承は、過去のことを伝えるだけでなく、今後どのような社会にしたいのかという、未来をつくる非常に大切な営みだ」と締めくくった。

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら