【東北の知恵で世界を救え】東北地域づくり協会が東日本大震災の伝承をテーマにした講演会 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【東北の知恵で世界を救え】東北地域づくり協会が東日本大震災の伝承をテーマにした講演会

 東北地域づくり協会(渥美雅裕理事長)は11日、仙台市内の日立システムズホール仙台で2019年度東北地域づくり講演会「『3.11伝承ロード』と被災地の未来~教訓が、いのちを救う~」を開いた。元国土交通事務次官で、東日本大震災の発生当時に東北地方整備局長を務めていた徳山日出男政策研究大学院大客員教授が「東北が大きな犠牲を払って手に入れた知恵を世界に役立てることが支援への恩返しになる」と強調した。また、今後の震災伝承の進め方について識者4人がパネルディスカッションした。

 冒頭、渥美理事長は約500人の参加者を前に、8月に東北経済連合会と共同で設立した産学官民の連携組織“3・11伝承ロード推進機構”の概要を紹介した上で「民間や行政との連携を強めながら総合的・有機的に活動を展開し、防災力の向上と被災地域の再生に大きく貢献していきたい」とあいさつした。

 続いて『教訓が、いのちを救う~東北に与えられたミッション~』と題して基調講演した徳山氏は「わが国は過去に幾度となく巨大地震や噴火、台風などの自然災害を経験してきたが、教訓や備え、組織の重要さが伝わっていない。災害列島に生きるという自覚を持ち、知識・備えによって災害は克服できる」と指摘した。

講演する徳山氏

 また、発災から間もなく9年を迎える中で「いつまでも被災地であってはならない。復興と震災伝承を一体で進め、われわれが得た知恵や教訓を伝えることで全国・世界に恩返しを行い、感動が人を呼んで復興につながるという好循環を起こしていきたい」と述べた。

 続いて徳山氏をコーディネーターに、同機構の代表理事で東北大災害科学国際研究所長の今村文彦氏と山本正徳岩手県宮古市長、震災伝承ネットワーク協議会長を務める佐藤克英東北地方整備局長が「『3.11伝承ロード』と被災地の未来」をテーマにパネルディスカッションした。

 この中で今村氏は同機構の目的と役割、活動領域などを説明した上で「海外では被災跡地などを対象とする観光をダークツーリズムと呼ぶが、われわれは震災ツーリズムを提案したい。これは現地で人々が交流することで自然の脅威を学び、知恵や取り組みを共有するものだ。過去を知り、現在を見つめ、将来の備えにつなげたい」と話した。

 山本氏は、津波の脅威を伝えるための震災遺構として復興交付金で初めて整備された「たろう観光ホテル」について「ホテルは津波で4階まで水に浸かり、2階まで壁が打ち抜かれた。日ごろから津波の威力をイメージし、しっかり避難しないと命が危ないということを後世に伝えたいと考えた」と振り返った。

 震災直後から約3年間、同整備局北上川下流河川事務所長として復旧・復興事業に携わった佐藤局長は「地元建設業の献身的な対応が、世の中に知られていない。復興を担ってきた業界の取り組みも伝承していきたい」と語った。

 最後に徳山氏は「復興が仕上げ段階に入った一方で、永久に続く震災伝承がスタートした。東北の知恵で世界を救えるようにしていきたい」と締めくくった。

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