【記者座談会】菅首相が所信表明/地方自治体の予算編成方針 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【記者座談会】菅首相が所信表明/地方自治体の予算編成方針

A 臨時国会が26日に開会し、菅義偉首相が初の所信表明演説をしたが、建設産業界にとっての注目ポイントはどこにあるのかな。
B 所信表明演説は「おわりに」も含めて全部で9項目だった。建設産業界にダイレクトに関係するのは「東日本大震災からの復興、災害対策」の部分だ。菅首相は、毎年のように甚大な被害をもたらす豪雨、台風への対策は「一刻の猶予も許されない」とし、堤防や遊水地の整備、大雨予測の精緻化などを組み合わせた洪水対策の推進に意欲をみせた。防災・減災、国土強靱化は引き続き大きな課題とし、省庁、地方自治体や官民の垣根を越えて、国土強靱化に取り組み、災害に屈しない国土づくりを進める決意も表明していたね。
C グリーン社会の実現では、温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを2050年までに達成し、脱炭素社会を実現すると宣言した。長年続けてきた石炭火力発電に対する政策の抜本的な転換も改めてアピールした。再生可能エネルギーや省エネルギーなどの脱炭素分野で多くの知見・ノウハウをもつ建設産業界の活躍の場がさらに広がりそうだ。
D デジタル化の実現に向けた固い決意も示していた。新型コロナウイルス感染症対策では、行政サービスや民間でデジタル化の遅れが浮き彫りになったことから、デジタルシフトの加速によるウィズ・アフターコロナの新しい社会の実現を強調した。行政のデジタル化は、建設産業界にも恩恵をもたらす。所信表明演説にも盛り込まれた、今後5年で地方自治体のシステム統一・標準化が実現すれば、生産性向上に向けて建設業界から要望が上がっている提出書類の簡素化につながることが期待できる。

いつどこで豪雨災害や大規模地震が起きてもおかしくない状況下で、防災・減災、国土強靱化分野への重点的・継続的な予算配分が求められている (写真は2019年の台風19号の影響による千曲川の堤防決壊で被害を受けた住宅街)

◆安全・安心、未来へ投資の視点を

A コロナ対策に関連した新たな支出の増大が予想される中、地方自治体の21年度予算編成方針はどうなっているの。
E 東京都は8月末に公表した予算見積もりの基本方針で、政策経費をゼロ・シーリングとし、管理事務費はマイナス10%のシーリングを設定した。豪雨災害・大規模地震などの災害への備えには配慮しているものの、「事業の必要性などをあらゆる角度から徹底して検証する」とくぎを刺している。コロナの影響による法人関係税収の落ち込みも予想されるため、工事関連予算の動向は不透明だ。
F 神奈川県は予算編成方針で「不急の建設事業などについて、中止や延期を含めた見直しを行う」と明記した。茨城県も予算要求の基本方針で、県税収入の大幅な減少が見込まれるなど、予断を許さない状況にあることから、あらゆる施策の「選択と集中」の徹底を打ち出している。長野県は予算編成方針に、当面は原則として新規の県有施設建設は行わないことを明記している。
E コロナの影響による税収減は地方自治体共通の悩みでもあるが、公共事業の削減は地域建設業界にとっては地活問題だ。いつどこで豪雨災害や大規模地震が起きてもおかしくない状況下で、「地域の守り手」が機能しなくなる状況は避けなければならない。
A コロナ対策関連の財政支出が拡大する中、財務省を中心に公共事業予算の抑制論が出てきているが、甚大化・激甚化する自然災害に対する国民の不安払しょくやコロナ禍による景気の冷え込みを下支えするためにも、21年度予算編成では防災・減災、国土強靱化分野への重点的な配分が求められる。国民の安全・安心、未来への投資という視点を忘れてはならない。

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