【ヒト・モノ・ハコをデジタル化】鹿島 「3D K-Field」導入でデジタルツイン実装を加速化 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

公式ブログ

【ヒト・モノ・ハコをデジタル化】鹿島 「3D K-Field」導入でデジタルツイン実装を加速化

 鹿島が、リアルタイム位置情報サービス「3D K-Field」を使ったデジタルツインの実装を加速化させている。同社など9社が出資する羽田みらい開発が運営する大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY」(HICity)の施設運営ツールとして導入しただけでなく、現場の資機材・人の動きを3Dモデル上でリアルタイムに確認できるツールとしての活用も広げる。デジタルツインで、“未来の現場”を創り上げる。

現場内の人の往来頻度を示すヒートマップ

 「3D K-Field」は、現場の作業員や資機材にビーコンなどを取り付け、現場内にゲートウェー(受信機)を設置し、BIMモデル上に人や資機材の動きを反映させてリアルタイムで建設現場の状況を可視化できる。資機材・人が現場のどこに存在するかを一目で確認できるだけでなく、タワークレーンのレバーや高所作業車の作業台、脚立の可動部、フォークリフトの座面などにセンサーを取り付けることで、資機材の稼働状況も把握できる。

 伊藤仁常務執行役員は「システム開発のもともとの発想は資機材の管理だ」と明かす。大規模な現場では多くの高所作業車をレンタルするものの、「稼働率が低いものもある。稼働状況が分かれば、現場で使いにくい資機材を返却したり、より必要な場所に配置換えするといったことを検討できる」というほか、「大規模な建築現場では、仮設エレベーターの待ち時間が実は大変、長い。仮設エレベーターにビーコンを取り付け、待ち時間をなくせば無駄な時間が大きく減る」ということも実現可能で、現場の利益に直結する取り組みとなる。

資機材の稼働状況が分かる画面


 加えて、作業員のヘルメットにビーコンを取り付ければ、現場の作業員の管理も可能になる。新型コロナウイルス感染防止のための現場内での3密回避ツールとしても使える。現在はビーコンの取り付けを作業員に強制していないものの、今後は鹿島専用のスマートフォンを作業員に配布する考えで、ビーコンを付けなくても一人ひとりの作業員の位置を把握できるようになる。さらに将来的には「顔認証を導入し、現場で渡されたスマホで自分の顔写真を撮れば、現場の映像で作業員が現場内のどこにいるか把握できるようにしたい」(伊藤常務)という。

 そうなれば、同社が作業員の日々の作業予定や作業内容を把握・伝達するために活用している建設現場施工管理サービス「Buildee」(ビルディ)との連携も可能になってくる。作業員の位置や作業内容・時間の履歴といったビッグデータの活用方法はまだ決まっていないものの、取得不可能な情報ではなくなる。

 こうしたシステムは「建設業のデジタル化は、『ヒト・モノ・ハコ』がポイントになる。モノは工場製作品にQRコードを取り付ければ、組立進捗をデジタル化できる。ヒトはK-Fieldでデジタル化する。それを3Dモデル上で組み合わせたハコが建物になる」という考え方をベースにしている。

 建物がデジタル化できれば、そのデータはそのまま施設運営にも活用できる。伊藤常務が「現場に導入したシステムを施主に見てもらい、効果を実感してもらうことで完成後の施設管理での活用につながれば」と語るのは、デジタルツイン実現のためのデータが設計から施工、維持管理までつながって活用される世界を想定しているからだ。

◇システム運用はOneTeam

 現場や建物でシステムの設置や構築・運用は、4月から本格的に業務を開始した子会社「One Team」(東京都港区、伊藤仁社長)が担当する。同社は、K-Fieldだけでなく、地盤調査車「GEO-EXPLORER」の運営支援や、現場での検査業務も担当する。検査や調査などの作業で使うツールがいくらICT化しても、現場の技術者がデータを整理していては生産性向上の効果は小さい。

 伊藤社長は「写真の撮影やクラウドへのデータ送信、整理といった業務はOneTeamが担当することで、現場の総合職は現場と図面の照らし合わせなどの業務に専念できる」と子会社設立の狙いを語る。

説明する伊藤常務(右)とOne Teamの天沼徹太郎課長

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら