【「非兼務」で「インナー」から】結実し始めた"ブランディング" 古郡建設が注目される理由 | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

公式ブログ

【「非兼務」で「インナー」から】結実し始めた”ブランディング” 古郡建設が注目される理由

 古郡建設(埼玉県深谷市、古郡栄一社長)が3年以上前から推進している「ブランディング」の先進事例を学ぼうと、新潟市の建築会社、田中組の田中康太郎社長らが6日、深谷市の本社や現場を視察に訪れた。専属部署のデザインマネジメント(DM)部を率いる渡辺文昭部長は、施工管理や営業、事務といった従来の“本業”との兼務でブランディングに取り組むのは困難と指摘。中小企業ではまず、社員の意識を変える「インナーブランディング」が重要と説いた。

オリンピックイヤーを意識した足場用PRシート


 古郡建設は、2017年8月にブランディングプロジェクトを始動した。ロゴマークやコーポレートカラー、作業服、ヘルメットなど目に見えるモノを短期間で刷新し、変化の意識付けを行った。これはあくまでもインナーブランディングの第一歩であり、実益への成果は期待できない我慢の時期に当たるという。

 このときはまだ、本業との二足のわらじで活動しており、「次にやりたいことがあっても現実的にできない」(渡辺部長)という状況で、取り組みも一時停滞した。ブランディングの成果を形にするには兼務では限界があると訴え、社長も新部署の設置を決断。社内各部から集まったメンバーがアイデアなどを出し合うブランディングチームとは別に、プランの実行部隊となるDM部を19年10月に設立した。部には広報、採用、デザインの各担当を配している。

 DM部は、決定権者の社長直轄であるのがポイント。両輪となるブランディングチームにも社長が参画しており、物事がスピーディーに進む。田中組も「兼務で失敗した」(田中社長)経験から、インフォメーションデザイン室という専門部署を設け、ブランディングを推進中だ。

 古郡建設は、社内デザイナーを置いて内製化することで、足場シートや仮囲い、安全掲示板といった現場の仮設資材、会社案内、各種ノベルティー、広報誌など、あらゆるブランディングツールのデザインや見せ方を統一化。ホームページ(HP)やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をおろそかにしないことも徹底し、アウターブランディングにも注力する。「いまの時代、見た目がよくないと見向きもされない。これからの社会の中心となる若者に響かない会社に未来はない」(渡辺部長)と肝に銘じる。

 活動開始から3年、DM部設置から1年余り、ここにきてブランディングが経営の軸の1つになり始めた。営業用のブランディングツールをきっかけに、新規顧客からの大型物件受注につながったり、埼玉進出を計画する県外民間施主からHPに直接問い合わせが寄せられるなど、実益に直結する事例が出てきた。SNSを通した応募など採用面でも効果が表れてきている。また、現場サイドからは、判断軸が明確になったため、安全設備のリース・購入時に迷うことがなくなったといった声も上がっている。

 ブランディングは見た目だけでなく、社員の意識を含め、会社の中身が変わらなければ機能しない。意見交換の場では、DM部発足後に一番力を入れたのは現場サポートであると紹介。ドローン撮影や見学会の資料作成・運営などに汗をかき、建設会社の主役たる現場からの認知、理解獲得に努めた。いまでは社内外からの評判も上々で、手応えを実感できるようになった。目指すは、金・人・モノが自然と集まってくる会社、口コミで勝手に広まる会社だという。

田中組の担当者らが視察。苦労話も交えながら意見を交わした

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら