【年末記者座談会】土曜閉所・月一回定着へ/CCUS普及に温度差 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【年末記者座談会】土曜閉所・月一回定着へ/CCUS普及に温度差

司会 10月に改正建設業法が施行されたが、官民による担い手の確保・育成、働き方改革の取り組みは進んでるかな。

記者A 統一土曜現場閉所の動きは6県で実施日が増え、2021年度は月1回定着を目標に取り組む予定だ。国は24年度までに段階的に直轄全工事で週休2日を発注者指定にする。県レベルでも浸透しつつあるが、市町村や民間発注者の理解促進が週休2日実現のかぎを握りそうだ。

記者B 閑散期をつくらない施工時期の平準化も重要な課題だ。20日に開かれた復興加速化会議では、東北ブロックの24年度地域平準化率を全体で0.75、岩手と秋田県域はより高い0.80にそれぞれ設定した。新・担い手3法とともに、市町村の隅々まで浸透させる必要がある。

司会 制度インフラとして定着を目指しているCCUSの登録状況はどうだろう。

記者B 東北6県での11月末の登録事業所数は5599事業所、技能者数は4万4426人で、この1年でともに2.5倍以上に増えたものの、全国的に比べてみると当初目標とは大きな乖離(かいり)がある。

記者A 東北地方整備局と宮城県はモデル工事の試行に取り組んでおり、福島県は総合評価落札方式で加点している。福島県郡山市は入札参加資格審査で評価した。今月9日の北海道・東北ブロック監理課長等会議ではCCUSに取り組む企業の評価促進について申し合わせたが、大半の発注機関はまだ様子を見ている状況だ。

司会 それぞれの立場で取り組みに温度差もあるようだね。

記者B 中央ゼネコンは積極的に導入しているものの、地場ゼネコンや専門工事業からは「メリットが見えない」「技能者の引き抜きが懸念される」といった声が上がっている。23年度から建設業退職金共済制度(建退共)の電子申請と連動した完全実施を目指しているが、早期定着にはさらなるインセンティブ(優遇措置)が必要と言える。

大手ゼネコンのCCUS導入現場。地場ゼネコンや専門工事業への普及が課題だ

◆生産性向上は自治体が低調

司会 生産性向上の取り組みはどのような状況か。

記者A 国は23年度までにBIM/CIMを原則化する方針を示しているが、自治体レベルでは総じて取り組みが低調だ。ソフトを扱える人材の育成が進んでいないことも背景にある。

記者B ICT活用工事については、中央ゼネコンや関心がある地場ゼネコンは一通り経験したようだ。普及に向けて、未経験の企業が1歩踏み出せるさらなる支援策がほしいところだ。

記者A 鹿島JVが自動化施工を全面展開している東北整備局発注の成瀬ダム堤体打設工事はまさに“土木の未来のショーケース”と言える。現場見学開催にも積極的で、一見の価値があると思う。

司会 ここからはさまざまな話題を振り返ってみよう。

記者C “復興五輪”が1年延期になったことは、より復興が進んだ姿を国内外に発信できると前向きに考えたい。昨年の岩手県陸前高田市に次いで宮城県石巻市に2番目となる国営追悼・祈念施設の石巻南浜津波復興祈念公園が来年3月28日に開園する。各地の伝承施設をつなぐ中核としての役割が期待される。

記者B 再生可能エネルギー施設の立地も進んでいる。4月に営業運転を始めた『ウィンドファームつがる』は、稼働中の風力発電所としては国内最大規模だ。日本海側の秋田県沖周辺では計画中を含めて25件の洋上風力発電がある。国内外の企業からも注目されている。

記者A 中心市街地の再生に向けた動きも顕在化してきた。特に老舗百貨店がらみの案件が多い。1月に破産した大沼山形本店(山形市)は12月に山形市都市振興公社が取得した。8月に閉店した中合福島店(福島市)や、仙台市でも藤崎周辺の一体的な再開発が計画され、青森市の中三跡地は先行して12月に再開発ビルに着工した。これらが核となって県庁所在地の“顔”が生まれ変わりそうだ。

司会 ことしは社会全体で暗い話題が多かったが、あの東日本大震災からここまで復興を成し遂げてきた。必ず克服できると信じて、前向きに新しい1年を迎えよう。

ICTを全面導入して自動化施工が進む成瀬ダム堤体打設の現場 (施工=鹿島JV)

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