【地域の暮らしを守る】感染想定の準備に注力 使命感に支えられるコロナ禍の道路除雪作業 | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

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【地域の暮らしを守る】感染想定の準備に注力 使命感に支えられるコロナ禍の道路除雪作業

 国道除雪の受発注者が最も懸念するのは、オペレーターらの感染や濃厚接触による除雪体制への影響だ。大雪に見舞われる中、感染者の発生に除雪作業の人員が減り手が回らなくなると、最悪の場合は交通が寸断され、市民生活に甚大な被害を与えかねない。そうした事態を避けるため、北陸地方整備局では感染者が発生した場合の対応も入念に準備している。

 同局では、仮にある除雪工区で感染者が発生した場合に備え、隣接工区の除雪業者が応援する体制を想定している。既に各除雪業者には隣接工区の除雪作業に対応するため、事前に現地調査を実施するよう依頼した。

 一方、課題として浮かび上がるのは除雪能力だ。同局長岡国道事務所湯沢維持・雪害対策出張所が管理する二居工区の除雪を担当する文明屋(新潟県湯沢町、大野康代表取締役)の曽根康博氏は「(隣接工区への応援の)期間が長くなければ対応できるが、2週間は持たない」との認識を示す。限られた人員の中、隣接工区まで除雪延長が伸びると当然、現場の負担は増し、除雪体制の維持に影響が出かねない。曽根氏の思いはどの除雪工区でも共通の悩みに見てとれる。

 そこで同出張所では、そうした事態に備えて、あらかじめ除雪能力の低下を公表することも視野に入れているという。高崎洋一所長は「当然、交通は確保する」と前置きした上で、「例えば1次除雪のみなど除雪能力が落ちることを事前にホームページで記者発表し、地域のご理解をいただく」と説明する。

 ただ、こうした方法はあくまで最終的な手段。円滑な除雪作業や体制維持のため、感染者を発生させないことが最重要事項であることは言うまでもなく、除雪基地内や作業時の対策を引き続き徹底していくことで受発注者の考えは一致する。曽根氏は「感染者を出さないよう、取り組みを強化していきたい」と力を込める。同社土木部工事課の久川英紀氏も「どこで感染するかわからない。対策をきちんとして予防を徹底する」と気を引き締める。

 取材した2020年12月14日は、強い寒波が到来した日だった。湯沢ICから三国峠方面に向かうごとに雪は深くなり、二居除雪ステーション周辺は既に一面が真っ白になっていた。その後、湯沢町では16日午前4時までの24時間降雪量が113cmと史上最多を記録。年末年始に加え、今月7日にも寒気により北陸地方の各地で災害級の豪雪に見舞われるなど、少雪の昨冬から一転して厳しい冬を迎えている。

 高崎所長が「この地域の除雪業者の方は『自分たちが地域を守る』という意識が強い」と話すように、過酷な状況下での除雪業務を支えているのは長年にわたり地元の除雪を手掛けてきたという使命感にほかならない。発注者にとってもそれは同様で、豪雪地帯で寸断なく確保された交通は「国道を止めない」という両者の強い信念の表れでもある。

 コロナ禍で社会資本整備を担う建設業従事者はエッセンシャルワーカーとして、改めてその重要性が認識された。その中でも積雪寒冷地にとって除雪業者が担う役割は大きく、冬季の市民生活や経済活動の維持には欠かすことができない。除雪作業に「一時中止」の選択肢は存在しない。地域を守るため身を切るような寒さに耐えながら、きょうも最前線での作業が続いている。

地域を守るという使命感が除雪作業を支えている

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