復旧速度を疑問視する見方は確かに存在する。ただ、その遅速を判断する基準はどこにあるのか。
大規模災害が発生した場合、早期の被災地支援が最優先されるため、被災した社会インフラには必要最低限の措置から講じていくことになる。道路であれば、被災前もしくはそれ以上の状態を一挙に目指すのではなく、まずは車1台が通れるような状態へと戻す。
「令和6年能登半島地震」「能登豪雨」でも同様の手順(段階的復旧)を踏んでいる。二つの大災害が重なったことで、復旧作業の難易度は増しているが、能登北部エリアの道路通行止め箇所(県道以上)は大きく減少し、被害が甚大だった国道249号沿岸部の輪島市門前町~珠洲市間の通行も2024年末に再開した。
河川、砂防、港湾を含む被災施設の復旧状況を踏まえ、国土交通省北陸地方整備局の高松諭局長は「地震から1年、豪雨から3カ月余りが経過したが、おおむね順調に進捗(しんちょく)している」との認識を示す。
一方で、事業遂行上のパートナーである建設産業は、一抹の不安を覚える。直轄管理施設がない能登地方の建設会社と国交省との関係性、官積算と実勢価格との乖離(かいり)などに加え、人手不足を背景に個社の企業体力が低下する中で「増大していく事業量に対応しきれるのか」という懸念が拭い去れないからだ。
同局では、過去の大災害を教訓に復旧・復興JVや地域維持型JVなどを導入し、大手企業と地元企業の総力を結集させる枠組みを構築している。また、石川県能登地方で実施する分任官工事を対象に、県様式の工事関係書類を受け付けており、直轄工事未経験の石川県内業者の参入促進と書類作成の負担軽減に努めている。
広大な施工範囲を「先進技術を導入するフィールド」(高松局長)と捉え、復旧・復興の加速化につなげる。NETIS(新技術情報提供システム)などに限らず、自社開発技術も認め、設計変更で対応する。
ただ、「先々を見据えるとこれだけでは足りないだろう」とし、「引き続き建設関連団体などと積極的に意見交換、情報共有し、課題などを適宜把握する。その上で必要な施策を講じていく」方針だ。
創造的復興には長い年月がかかる。能登地方は人口減少が現実のものとなっている半面、歴史や文化、豊かな自然が織りなす景観を財産に持つ。高松局長は「(被災地に)夢と希望を持ってもらえる、次世代に引き継げる地域づくりに貢献する」との意を強くする。
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