【東京のまちを仮想空間に再現】3Dマップ実装に向け本格的な議論スタート 課題も浮き彫りに | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【東京のまちを仮想空間に再現】3Dマップ実装に向け本格的な議論スタート 課題も浮き彫りに

 東京のまちを3次元の地図で仮想空間に再現する試みが東京都で始まっている。「都市の3Dデジタルマップの実装に向けた産学官ワーキンググループ(WG)」がマップの仕様やつくり方などの議論を開始した。建設局や都市整備局では、施設の管理や危機管理に加え、都市計画上の制限緩和などの政策検討にも活用が期待できる。ただ、利用ケースに応じて、求められるデータの精度にはばらつきがある。追加でデータを取得する上では、プライバシーに配慮することなども大きな課題だ。

デジタルツインのイメージ


 3Dマップには、建築物や道路の情報に加え、人流や交通など多分野にわたるリアルタイムデータを付加する。これらをコンピューターの仮想空間上に再現し、都市の状況をリアルタイムに把握しようという試みだ。

 「デジタルツイン」と呼ばれるこの取り組みが実現すれば、都市課題の解決や都民生活の質の向上に向けた施策検討などの基盤にもなる。

 想定できるデジタルマップの作成手法には、既存の2D地図を3D化する手法や、レーザー計測によって得られた点群データからのモデリング、BIMの活用などを挙げた。

 2D地図の場合は高さ情報を付与する必要があるため、写真やレーザーによる計測との組み合わせが必要になる。写真の場合は、計測のラップ率(重複度)や解像度によっても作成可能な3Dモデルの精度が変わる。

 2次元の基盤地図は、公共測量作業規程準則に基づく地図情報レベル2500程度で作成された地形図が主流だ。都は、縮尺1/2500地形図が該当する。今後、民間から調達したデータや点群データを採用する場合には、同程度の要件を満たすことが求められる。

 3Dマップは、危機管理や人流解析などへの利用も期待される。地下街や地下歩行空間などの情報も必要になるが、現状ではデータが不足している。また、バリアフリー経路の可視化などの場面では、より精度の高い情報が求められる。

デモ用3D都市モデル
(渋谷・六本木エリア)


 このほか、データ取得については、建物を撮影した写真に写り込んだ人の個人情報やプライバシーなどへの配慮の必要性が指摘されている。3Dマップを2次利用する際には、施設の意匠や知的財産などの権利も課題になる。

 情報の鮮度については、WGの委員から「毎年、建物が建て変わっている東京の都心の3Dデジタル空間の定期的な更新をどう考えるかが最大のポイントだ」との意見が出た。 

 「1年に1回は必ず更新をするようなところから議論を始めてはどうか。それを成り立たせる事業スキームには何が必要になるかといったことを検討することに意味があると感じる」と続けた。

 より詳細なデータを取得する際の手段については、撮影した写真などに写り込んだ人や建物に関する個人情報やプライバシーへの配慮の必要性が指摘された。

 「ストリートビューの撮影では、カメラの高さを一定限度に制限している。住宅密集地や重要インフラ上空の飛行制限といったドローンの規制法もある」とデータ取得の上で課題を挙げる声もあった。

 都は今後、指摘された課題や、必要なデータ、運用などの課題を検証するためにパイロットマップを作成する。

 モデルエリアは、大丸有(大手町・丸の内・有楽町)の都心部、西新宿、豊洲・竹芝のある臨海部の3カ所。検証のため、各モデルエリアでは利用ケースを絞り込む。

 例えば、都心部の大丸有では、BIMを活用した場合の屋内情報を盛り込むことを想定している。施設を管理する企業などから情報を調達する場合のライセンスや、開示範囲などのセキュリティー対策が主な検討課題だ。検証状況は、2月の会合で報告する予定だ。

デモ用3D都市モデル
(西新宿エリア)



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