【人中心のまちにも影響大】東京都の駐車場条例検討 駐車場の適正配置へ向けルール模索中 | 建設通信新聞Digital

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【人中心のまちにも影響大】東京都の駐車場条例検討 駐車場の適正配置へ向けルール模索中

 交通や物流など、自動車は日本の社会経済において不可欠な道具だ。その車を一時的に駐め置く駐車場の配置は、人中心のまちづくりにとって重要な要素のひとつ。地方自治体は、条例などで駐車場の供給を増やしてきたが、近年では自動車の保有台数が頭打ちとなり、東京都心などでは需給バランスが崩れる地区も出始めた。インターネットによる宅配需要の高まりなど駐車需要が変化を見せる中、東京都は、より地域の実情に合った駐車場付置の制度設計を模索している。

 国土交通省によると、国内の自動車保有台数の伸びは2000年代に入ると増加が急速に鈍化したという。これに対し、18年度の駐車場の総供用台数は一貫して増加傾向をたどっている。

 東京都23区では、自動車の保有台数が減少している。一方で、駐車場台数は増加が続く。両台数の08年から18年までの推移を見ると、自動車保有は227万台から207万台に減り、駐車場は61.2万台から76.1万台に伸びた。

(出典:国交省第33回全国駐車場政策担当者会議)


 堅調な駐車場の増加は、都の駐車場条例が支えている。1958年に制定し、一律の基準で建物への駐車場付置を義務付けた。再開発などで新たに発生する駐車需要を、整備した建物に吸収してもらおうという形を想定した。

 「大きな開発が起きると付置義務で駐車場は大きく増えることになる。いまとなっては多くの駅などで整備が進んでいる」と東京都都市整備局の担当者は指摘する。
 ただ、都心部のような鉄道網が発達しているエリアでは、移動を鉄道に頼る割合が高く、駐車場の供給が過剰になりやすい。新しい建物ができるたび、小規模な駐車場が生まれ、分散していることも問題だ。

 「使われていないタワー型の駐車場でも維持管理に費用がかかる。ゼロにはできないにしても、実情を踏まえた検討が必要だ」

 都では、こうした地域特有の事情を踏まえ、付置義務台数のルールを決めることができる制度を設けている。02年度に都の条例に追加された地域ルールだ。

◆地域の駐車実態を反映するルール設定
 例えば、渋谷地区では、駅を中心に公共交通機関が発達している。このため、自動車の依存率が低く駐車需要はあまり多くないが、商業施設が多い関係で荷さばきのための路上駐車が多い。

荷さばき車両による交通阻害


 そこで、不足している荷さばき駐車スペースの確保や、地区内に点在している駐車場の集約化などに貢献する駐車施策を実施した場合に、付置台数の減免を認めるといったルールを設けている。

集約駐車施設のイメージ


 同局が「いままでは路上駐車をどうするかが問題だったが、これからは、まちづくりと違法駐車対策の両方を視野に入れる必要があるだろう」と話すように、人中心のまちづくりを目指す上で地域ルールが果たす役割への期待は高まっている。

 ただし、地域の実態に即したルールを設定するには、地元の区市や事業者による実態調査が必要だ。

 現状では「調査するべき項目のノウハウの手引きなどがなく、コスト面の問題もある。(ルールを)つくって終わりではなく、その後も運用していかなければならない」とハードルは高い。

 こうした課題も踏まえ、制度を拡大しつつ、より利用しやすくすることなどを目指し、同局は20年11月に駐車場条例検討委員会を設置した。

 議論では、新たに鉄道駅周辺に加え、立地適正化計画などに基づく地域ルールの設定を可能にすることを検討している。区市に限定されていたルールの策定主体には、開発事業者やエリアマネジメント団体などを追加する考え。

 策定主体が多様化することを想定して、策定プロセスや規定する内容などを盛り込んだガイドラインについても新規でまとめる。

 検討会では、付置義務基準の緩和に関する議論も想定しているが、新型コロナウイルスが自動車利用に与えた影響の把握が必要なため、具体的な検討は利用実態の調査などを経てから始める方針だ。

東京都駐車場条例検討委員会の初会合



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