【目白の森のキャンパス】妹島和世氏が手掛けた日本女子大学・目白キャンパス 正式オープン | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

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【目白の森のキャンパス】妹島和世氏が手掛けた日本女子大学・目白キャンパス 正式オープン

 世界的に著名な建築家、妹島和世氏がグランドデザインを手がけた日本女子大学目白キャンパス(東京都文京区)が、そのほぼ中央に位置する「百二十年館」と不忍通り側の「新学生棟」完成により正式にオープンした。同大は妹島氏の母校でもある。都心に残された貴重な緑を生かし「目白の森のキャンパス」をコンセプトに計画、既存の建物と4棟の新たな建物をバランスよく配置・融合し、地域社会との共創拠点も目指すキャンパスが誕生した。ピロティと大きな中庭を特徴とする百二十年館について妹島氏は、「より多くの学生が多様な活動のために共有できるような、ひとつの完結した建物ではなく、キャンパス全体が連続した空間になればと考えた」と話す。

妹島氏と篠原学長(右)


 「目白の森のキャンパス」整備は、2021年度120周年を迎える日本女子大学の記念事業として12年から動き出した。同年に西生田キャンパス(川崎市)にある人間社会学部の目白キャンパスへの移転が決まり、21年4月に創立の地である目白に4学部15学科と大学院が統合することになった。学生数は2000人ほど増えて約6000人になる。同事業では、2月に完成した百二十年館、3月完成の新学生棟のほか、図書館(19年に先行オープン)、青蘭館(同)の4つの建物が新設された。いずれも設計・監理は妹島和世建築設計事務所・清水建設設計JV、施工は清水建設が担当した。

採光と風通しを考えた百二十年館の吹き抜けのパティオは、学生の憩いと創意工夫の場を提供


 3月末に開かれたメディア向け内覧会は、妹島氏と篠原聡子学長が建物を案内した。篠原学長は「事業が始まった当時、(一教授として)妹島さんに電話でお願いをして快く承諾いただいたことを思い出す。苦労もあったが完成を迎え感激している。事業の建設事務室長も務めていたので工事のご苦労も見てきた」と述べた。

 妹島氏は「プロセスは大変だったが篠原学長などに調整をいただき完成できたことをとてもうれしく思う。全体構想をつくらせていただいた時に、東京都心でこれだけの緑が残っているところは少ないので、できるだけ緑を残したいと思い、目白の森のキャンパスというコンセプトでスタートした」などと話した。

 そして、公道で4地区に分かれたキャンパスを緑でつなぐこと、目白通りと不忍通りに面した門の近くの建物をキャンパスの顔とすること、百年館など既存建物と新規建物を融合させ連続性を生むこと、さまざまな性格を持つ学生滞在スペースを散在させること、学生だけでなく地域の人々の活動を行う場を提供し地域とともにあるキャンパスを目指すことなどの設計意図を説明した。

 新設された百二十年館は、S一部RC造地下1階地上3階建て延べ5799㎡。人間社会学部の4学科研究室、大中小23の教室、ラーニング・コモンズ、学生滞在スペースが入る。建物上部には、新規建物共通のシンボルとなるヴォールト状の屋根を設置した。キャンパス内の動線や周囲の建物などへの圧迫感を抑えるため、低層の建物とし、採光と風通しを良くするために大きな吹き抜けの中庭(パティオ)を設けている。パティオは学生の憩いの場であるとともにイベントスペースにもなり、学生の創意工夫が生かせるとしている。

 1階の半分以上が屋外のピロティ空間で、パティオと一体となって棟全体を見渡すことができる。パティオに降りると、四方を囲む学修空間と自然なつながりが生まれる。ピロティ空間は、目白通り側からの人の流れと不忍通り側からの人の流れを融合する要ともなっている。地下1階のラーニング・コモンズ(かえで)は、学外学修推進の場、自治体や企業などと連携し社会への扉を開く場として学生の相談や支援を行う。語学学習などのランゲージ・ラウンジもここに移動して地域や世界へ発信する拠点も目指している。

新規4建築共通のヴォールト状の屋根を持つ百二十年館外観。1階は半分以上がピロティ空間


 不忍通り側の入り口に建つ新学生棟はキャンパスの1つの顔となる建物。普段は食堂、学生滞在スペースとして使う。施設内はWiFi環境が整い、大人数のイベント開催も可能で、学生たちの創意工夫でいろいろな活用ができるという。新規建物共通のシンボルのヴォールト状の屋根の下には、テラススペースがあり、ここも多様な使い方ができる。妹島氏は「大学と地域を柔らかくつなぐスペースになれば」と話している。ガラス張りの壁面は百二十年館と同様に、災害時対応や新型コロナウイルスの影響を考慮し、自然換気できる窓を随所に設置している。S造2階建て延べ1134㎡。

 図書館は、4階のフロアまで回遊するようにスロープが設けられ、ワンルーム空間のように書架スペースと閲覧スペースが連続的につながっている。妹島氏によるとそれぞれの人がその時の気分で、自分の好きなところを選べる多様な場所を持つ空間を考えたという。S一部RC造地下1階地上4階建て延べ6607㎡。

図書館は4階のフロアまでの回遊スロープと書架・ 閲覧スペースの連続性を特徴とする


 青蘭館は主に学生の滞在スペース、隣接する附属豊明幼稚園・小学校保護者の休憩スペースなどとして使う。ガラス張りの壁面によって学生の活躍を地域に発信する場の機能も持たせている。S造平屋建て198㎡。



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