【2020年度i-con大賞大臣賞】維持管理の効率化にICTを積極活用 富山市の多様な取り組み | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【2020年度i-con大賞大臣賞】維持管理の効率化にICTを積極活用 富山市の多様な取り組み

 富山市は、国土交通省による2020年度i-Construction大賞の地方公共団体等の取組部門で大臣賞を受賞した。「インフラを守る時代のi-Construction」として、CIMの活用や建設業者向けシンポジウムの開催など、維持管理の効率化に向けた多様な取り組みを着実に進めている。

 受賞に当たっては、▽橋梁架替事業へのCIMの導入▽道路占用許可申請の電子申請システムの構築▽維持管理へのセンサーネットワークの活用▽i-Con推進シンポジウムの開催–などが評価された。

19年10月のi-Con推進シンポジウムには約180人が参加


 建設部建設政策課主幹の山本貴章氏は「インフラはメンテナンス時代に突入し、さまざまな形で対策を講じなければならない。市として少しずつでも取り組みを進める中、その点を評価していただいたのではないか」と喜びを口にする。同課の講神雅人氏も「今回の受賞で市としても取り組みを進めやすくなる。国の後押しをいただき大変ありがたい」と謝意を表する。

 CIMは八田橋の架替事業で導入した。いたち川に架かりLRT(次世代型路面電車)も走る同橋の架け替えに当たり、CIMを活用して設計段階で鉄筋の干渉などを検証した。施工計画立案時も施工順序や資機材の配置スペースの確認などに利用。住民説明や市民への周知でも完成イメージをわかりやすく伝えた。CIMにひも付けたデータは今後の維持管理での活用を見据えている。

八田橋の架け替えにCIMを活用した


 道路占用許可申請に関しては19年に電子申請システムを構築。システムに登録された情報はライフラインや交通、生活安全などの情報をまとめた「富山市ライフライン共通プラットフォーム」に工事予定情報や通行制限情報として反映され、市民への正確な道路情報の発信につなげている。

 河川に設置した水位計の観測データを基にしたモニタリングシステムを20年度に構築し、4月からホームページで水位情報の公開を始めた。電話回線を利用した橋梁のモニタリングシステムも18年から稼働している。山本氏は「市発注工事でのICT活用はまだ難しい部分もあるが、維持管理では安価で導入しやすく、できるところから取り組んでいる」と話す。

 また、市内全域には約100の公共施設に設置したアンテナによるセンサーネットワークを構築し、維持管理の効率化を始め、多分野での活用に向けて民間からの実証実験も公募している。

 i-Con推進シンポジウムは19年10月に日本建設情報技術センター、富山県国道等道路事業促進協議会とともに開催。約180人が参加し、国や富山県、市のICTの取組状況を共有し、ICT活用への機運を高めた。市としても初めての取り組みだったが、山本氏は「さまざまな方の後押しがあって開催することができた」と振り返る。

 市は今後も維持管理への積極的なICT活用に取り組む。山本氏は「維持管理でICTが果たす役割は大きい。引き続きアンテナを高くして、取り組めることから進めていきたい」と力を込める。講神氏も「ICT活用の取り組みが増えてくれば(製品などの)汎用化が進み、市としての取り組みもさらに進めていけるのではないか」と展望する。



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