【従来品の課題解決】腕上げ作業用アシストスーツ本格普及へ ダイドーが戦略的モデルを開発 | 建設通信新聞Digital

5月9日 木曜日

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【従来品の課題解決】腕上げ作業用アシストスーツ本格普及へ ダイドーが戦略的モデルを開発

 住宅建材などを手掛けるダイドー(大阪府河内長野市)は、2019年から腕上げ作業用アシストスーツを展開しており、その最新機種「TASK AR3.0」を開発した。同社はこの3.0を従来製品の諸課題を克服した本格普及を狙える戦略的モデルと位置付け、価格も大幅に引き下げたことで建設業界への普及を目指し積極展開していく考えだ。

ショックコードを動力とするシンプルな構造によって、コンパクト化、大幅な軽量化、癖の少ない滑らかな動きを実現した


 同社は建材メーカとして建設現場に出入りすることが多く、常々職人らから天井施工など腕を上げ続ける作業が辛いという声を聞いていた。労働災害で報告事例が多い上肢災害では、腱板断裂になった場合の完全復帰率が約4割にとどまっている状況も踏まえ、作業の負担軽減に向けた試行錯誤が始まった。

 部材そのものの改良などさまざまなアプローチを試みた結果、「当社はキッチンメーカー向けに昇降収納の住宅設備も製作しており、この技術を活用して上を向いての作業を楽にできるアシストスーツを開発することになった」(近藤尚也執行役員営業二部長)と振り返る。

 米国のロボティクスメーカーであるエクソ・バイオニクス社とライセンス契約を結び、それをベースに同社の技術を加味して腕を上げる動作をすると電気機構なしでアシストが発生し、半自動で腕が持ち上がって上向きで保持される製品を開発し、19年2月から「TASK AR1.0」として販売。20年5月には出っ張り部分を小さくした後継機となる「同2.0」を展開した。

 これまで1.0と2.0で累計200台を販売。このうち建設業界での販売が3割程度を占める。ウォータージェット工事や風力発電メンテナンス作業、点検関係の業務などでニーズがあるという。

 ただ、ガススプリング式のこれらの製品は構造上、フルハーネス型の安全帯と併用しずらい装備の大きさ、重さが難点でもあった。さらに、動きにも特有の癖がありビス打ちなどで狙いを定めにくいといった意見も出ていた。

 そこでショックコードを動力とするまったく新しい方式の製品開発に着手。アシスト力は片腕1.5~3㎏重で2.0よりは劣るものの、背中に装着しないシンプルな構造でコンパクト化し、安全帯などほかの装着物との干渉をなくした3.0が誕生した。

 本体重量も従来の3.9㎏から1.7㎏へと大幅に軽量化しており、動作の癖が少ない滑らかな動きも実現。一人で簡単に装着できるようになっている。

TASK AR3.0を装着することで天井施工など 腕を上げ続ける作業の負担を軽減


 このように諸課題を一気にクリアしたことで拡販に向けた視界が開けており、さらに構造がシンプルでライセンス料が不要となることなどから、価格も大幅に引き下げた。3.0は1台当たり12万9800円(税込み)で、2.0の3分の1程度となる。

 ただ、ウォータージェット工事など一部の分野では従来方式の性能が必要となるため、高齢者や女性を含めた幅広いユーザー向けの3.0と、アシスト力を求めるユーザー向けに特化した2.0を併売していく考えだ。建設業向け以外も含め、年間600台の販売を目指す。近藤部長は「エンドユーザーとなる職人にどうアピールするかも考えたい」と認識している。

 同社は本社を置く大阪と東京に営業所を持つため、当面はこの拠点を中心とする販売に注力し、原価が下がってくれば代理店方式を含め全国展開を本格化させる。「主に農業用途向け」ではあるが1月当たり3万円でのレンタルも計画している。

 これまでの顧客への提案を通じて「評価してもらっており、手応えを感じている」とのことだが、製品改善に向けた開発は継続していく。「さらなる軽量化や強度アップなど、ニーズを見極めながら取り組みたい」としており、今後の展開が期待されている。



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