【伸展する関西の建設ICT⑨】新たな柱にBIMモデリング事業 JPC | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

B・C・I 未来図

【伸展する関西の建設ICT⑨】新たな柱にBIMモデリング事業 JPC



川崎氏

 

建築プロジェクトへのBIM導入拡大を背景に、BIM対応にかじを切る企業も目立ち始めた。木造プレカットを主軸に建築関連のデータ入力を手掛けるJPC(大阪府貝塚市)もその1つだ。同社営業責任者の川崎剛幸氏は「新たな業務の柱としてBIMモデリング事業を拡大していきたい」と力を込める。その初弾として大阪ガス都市開発(大阪市)から管理ビルのBIMデータ化を受託し、幸先の良いスタートを切った。

木造プレカットのデータ入力会社として最大手の同社は150人ものCADオペレーターをもつベトナムグループ会社のソンタンテクノロジー(ホーチミン市)と連携し、日本国内で建築関連データの入力業務を幅広く手掛けている。主力である木造プレカットCADへのデータ入力では100社を超える企業・工場と取引しており、近年は住宅分野でのBIM拡大を背景に2018年からベトナムグループ会社内でBIMソフトを使いこなすオペレーターも拡充してきた。

 

◆設備台帳とBIMデータを連携
川崎氏は「海外ではBIM教育が進展し、優秀なオペレーターも多く、ベトナム側からBIMモデリングの依頼があれば対応したいと要望されていた」と明かす。BIMソフトの『Revit』や『Archicad』に加え、3次元設備CAD『CADEWA』、架構図専用CAD『REAL4』なども使いこなし、幅広くBIMデータ連携にも対応できる体制を確立。ベトナムグループ会社のオペレーター150人のうち10人ほどをBIMチームとして位置付けた。

ベトナムグループ会社の
モデリング風景

JPCと大阪ガス都市開発の出会いは、偶然がもたらした。所有ビルを最適に管理する手段としてBIMに着目していた大阪ガス都市開発で技術本部エンジニアリンググループの花木章友係長は、社内ネットワークからBIMモデリングに取り組もうとしている会社があるとJPCを紹介され、「タイミングよく知り合うことができた」と振り返る。

初弾の業務は、大阪ガス都市開発が所有するUX小倉ビル(京都府宇治市)とUX御池ビル(京都市)をBIMデータ化し、設備台帳とBIMデータを連携させる内容だった。川崎氏は「紙図面からBIM化する作業であれば、初仕事のわれわれにとってトライしやすいと考えていたが、実際には設備台帳にデータをリンクさせる部分に四苦八苦した」と振り返る。

Archicadをベースソフトに選定し、設備部分はCADEWAで対応したデータを連携させた。そのデータを設備台帳とリンクさせ、モバイル用BIMコミュニケーションツール『BIMx』を使って管理する仕組みとした。入力した部材数はUX小倉ビルで約1万3000点、UX御池ビルで6万7000点にも及んだ。花木氏は「機械室の設備機器や配管の位置も含め、建物全体の現況とBIMとの整合性確認をいかに効率的よく行うかが重要」と振り返る。

最初に取り組んだUX小倉ビルの整合性確認では表計算ソフトのエクセルを使い、仕様書を整理してきたが、部材点数がその5倍を超えるUX御池ビルではJPCのベトナムグループ会社が日頃の業務に活用していた工程管理アプリ『Redmine』を使い、作業の効率化も図った。UX小倉ビルは20年3月から、UX御池ビルは21年3月からBIMとリンクした設備台帳による運用管理がスタートした。

設備台帳とリンクしたBIMモデル

JPCは大阪ガス都市開発からの初受託を足がかりに、BIMモデルリング業務の対応を強化する。現在10人のBIMオペレーター体制を拡充し、対応ソフトもさらに増やす方針。川崎氏は「BIMの導入拡大によって、下支え役のBIMオペレーター不足が表面化しつつある。設計、施工、さらには維持管理までさまざまな要求に対応し、日本のBIM普及に少しでも貢献していきたい」と力を込める。

 

【B・C・I 未来図】ほかの記事はこちらから

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら