【伸展する関西の建設ICT⑥】データ連動性がBIMのメリット 日建設計 | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

B・C・I 未来図

【伸展する関西の建設ICT⑥】データ連動性がBIMのメリット 日建設計

金子氏

 

新築プロジェクトの基本・実施設計で100%のBIM導入を目指す日建設計。大阪オフィスでは8割程度まで導入が進む。新領域開拓部門兼設計部門アソシエイトアーキテクトの金子公亮氏が「意匠、構造、設備の連携に加え、施主とのコミュニケーション手段としても機能している」と語るように、BIMは業務ツールとして定着し始めた。2013年にグラフィソフトと戦略的パートナーシップを結び、標準ソフトの1つとして位置付ける『Archicad』を使ったプロジェクトを通して同社のBIM最前線を追った。

 

城戸氏

社内では設計担当が業務のスタートアップ時に3Dセンター室とBIMの活用方針を打ち合わせする流れが定着している。大阪オフィスで同室アソシエイトシニアBIMコーディネーターを務める城戸康行氏は業務内容に応じ、BIM導入の最適化を図る中で「意匠性の高いプロジェクトには3次元モデリングツール(Rhinoceros)との相性が良いArchicadを採用するケースが傾向として多い」と話す。

 

 

阿波銀行本店営業部ビル

19年に竣工した阿波銀行本店営業部ビル(徳島市)もその1つだ。建物の6割がパブリックスペースとなる、スキップフロアの構成とした。設計担当の金子氏はコンセプトづくりの段階から施主と密接な対話を進めてきた。「階段が交差する複雑なフロア構成も空間的に確認してもらうことができ、合意形成にBIMが効果的に機能した」と振り返る。

 

尾道市本庁舎

20年竣工の尾道市本庁舎(広島県尾道市)ではトラス構造によって建物を海側に迫り出させ、造船技術を応用した外装デザインに取り組んだ。金子氏が「BIMでなければ実現しなかった」と説明するように、3次元曲げ外装鋼板の形状検討などでモデリングツールを多用し、統合したBIMデータは施工者にも受け渡した。国土交通省の建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業に採択され、BIMの活用により、施工段階では15%の工務作業時間短縮、維持管理段階では運用前の準備作業が50%削減できると試算した。

藤田氏

 

当時、設計チームに参加していた設計部門プロジェクトアーキテクトの藤田俊洋氏は打ち合わせ用の図面やモデル、プレゼンテーション動画の作成を担う中で、Archicadのチームワーク機能を使い、複数人で同時作業を行いながら検討を進めてきた。現在所属する名古屋オフィスではこの5年間で5、6件のBIMプロジェクトに携わった。「デザインの検証に優れるBIMだが、最近は環境解析を行うツールとしても効果を発揮している」と強調する。

 

 

◆環境性能と眺望の両立手段

フィンの外装が特徴的な「御堂筋ダイビル建替計画」

金子氏が担当した御堂筋ダイビル建替計画(大阪市)でも環境性能と眺望の両立を実現する手段としてBIMの存在感が増している。建設地は御堂筋沿いで、方角や階によって眺望が異なる。南面は全体的に眺望が開けるが、低層建物が多い西面は高層部の眺望がよく、東面の低層部は御堂筋が良く見渡せる。「空と御堂筋が見えることを価値として、フィンの長さや角度を変えた外装デザインを生み出した」と明かす。

野嶋氏

設計チームの一員として参加する大阪オフィス設計部門プロジェクトデザイナーの野嶋淳平氏はモデリングツールを使い、フィンの最適化を担ってきた。入社して2件目のBIMプロジェクトとなり、図面に連動したArchicadの活用は今回が初めてだった。「複雑な条件からデザインの最適解を示す際にBIMが有効であると感じた」と話す。

建築の要求は多様化し、組織設計事務所にとっては意匠、構造、設備の各部門の密接な連携が作業効率や設計品質の側面からも重要になっている。金子氏は一連のプロジェクトを通して「BIMのデータ連動性が最大のメリットになっている」と実感している。

 

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