【伸展する関西の建設ICT⑧】重点テーマは「LCC最適化」 大阪ガス都市開発 | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

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【伸展する関西の建設ICT⑧】重点テーマは「LCC最適化」 大阪ガス都市開発

花木係長

 

Daigasグループの大阪ガス都市開発(大阪市)が、管理ビルの遠隔監視やBIMデータ化に取り組み始めた。技術本部第1技術部エンジニアリンググループの花木章友係長は「管理ビルの情報をクラウドに集約し、その情報を活用した中長期修繕計画立案やビル管理業務効率化を進めながら、LCCの最適化を進めていく。この2つの取り組みは密接につながっている」と明かす。遠隔監視ではオープンシステムとして注目されるアイテック阪急阪神(大阪市)と、BIMデータ化では新事業としてBIMモデリングに乗り出したJPC(大阪府貝塚市)と連携し、力強い一歩を踏み出した。

関西に30棟を超えるオフィスビルを所有する同社では、LCCを最適化することを部内の重点テーマに位置付けている。花木氏は「管理ビルの情報をクラウドへリアルタイムに集約、必要な時に正確な情報を活用できる環境が、精度の高い中長期修繕計画の立案につながる。その手段として遠隔監視による情報の蓄積とBIMとのデータ連携を進めていく」と説明する。

 

◆オフィスビルの遠隔監視と維持管理にもBIMが活躍
そのトライアルをRC造5階建て延べ3537㎡のUX小倉ビル(京都府宇治市)で進めてきた。ビル管理体制を見直し、遠隔監視システムを導入するとともに、建物のBIMデータ化も行い、日々蓄積されるビル管理情報とBIMモデルを連携できる枠組みを整えた。花木氏は「BIMによって技術者でない方でも感覚的に現場を把握でき、近年の技術者不足に対する解決策の1つ」と説明する。

第2弾として、S造1部RC地下2階地上8階建て延べ5953㎡の東館とS造1部RC地下1階地上8階建て延べ7804㎡の西館で構成するUX御池ビル(京都市)を選定し、遠隔監視システムを導入、合わせてBIMデータ化も進めてきた。「3つのビルで成果を検証し、より最適なLCC立案の枠組みを構築していきたい」と付け加える。

BIMデータ化については、京都サーチパーク(KRP)地区内に、ことし3月竣工したKRP10号館でも試みた。建物規模はS造1部RC地下1階地上7階建て延べ3万4219㎡。施工を担当とした大林組と施工図を基に、維持管理用BIMモデルを構築し、今後の運営段階に活用していくという。

KRP10号館(上)

 

BIMモデル

 

大阪ガス都市開発にはKRP10号館のBIMデータがこの10月に納品され、今後は計4棟でビル管理情報の蓄積が動き出す。新築プロジェクトでは維持管理での活用を想定し、設計者や施工者にはBIM活用を条件化する方針も決めた。また、グループ会社の大阪ガスファシリティーズ(OGFA)と共同でFM支援システムを開発し、グループ内でのビル管理情報蓄積の強化を進めつつ、OGFAの新ビジネスとしてデータマネジメントサービスの提供を22年度から開始する。

動き出した大阪ガス都市開発のBIM-FMの流れは今後どう進むか。花木氏は「これからは維持管理BIMの検証フェーズに入る。重要なのはビル情報が遠隔監視などにより正確にクラウドへ蓄積され、その情報をBIMなどの手法を用いて効率よく活用することでLCCを最適化していくことである」と力を込める。

 

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