【水害に強いまちへ】高台まちづくりワーキンググループが地元区交え取り組み検討開始 | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【水害に強いまちへ】高台まちづくりワーキンググループが地元区交え取り組み検討開始

 発生のおそれが年々高まる大規模水害にまちづくりの計画段階から備える「高台まちづくり」。東京都と国土交通省が2020年度に打ち出した新たな方策の実現に向け、モデル地区に選ばれた地元自治体を交えたワーキンググループ(WG)が3月末に立ち上がった。会合には地元区の担当者らが参加し、最新の検討状況を報告した。

 高台まちづくりは、20年12月に国交省と都がまとめた「災害に強い首都・東京形成ビジョン」の中で示した。水害の発生時に、早期避難ができない場合でも、命の安全・最低限の避難生活水準を確保できる避難場所を面的に整備する試み。

 高規格堤防や高台化した公園、鉄道駅周辺のデッキなどの高台にある拠点と、想定される浸水深よりも高い位置にある道路や通路などで線的・面的につなぐことで、緊急避難先と浸水区域外への避難を実現する。

 人口が多い大都市が水害に備えるための施策の柱になる。東京では具体的に取り組むモデル地区には、荒川の氾濫(はんらん)を想定した際に被害が予測される足立、板橋、江戸川、葛飾、北、江東、墨田の7区を選定した。

水害に備えた避難施設の整備などを公共貢献として評価する地区

◆区の検討状況が明らかに
 ビジョンでは一部のモデル地区の取り組みは、具体化されていなかったが、WGの中で江東区などの検討状況が明らかになってきた。

 同区は会合の中で、区内にある利用可能な高台が、避難を必要とする住民の数に対して「絶対的に不足している」と危機感をにじませた。

 そこで高架道路の活用など、区が管理していないインフラも含め、あらゆる高所を有効活用できるような仕組みをつくるため、国や都に協力を求めた。それでも足りない部分は、公園など一定の広さが確保できる公共施設を中心に高台化を進める考え。

 民間との連携も模索する。区内に27団地1万7000戸余りの都市再生機構(UR)の団地が立地することから「URが建て替えを進める中で、一定規模以上の団地については連携しながら周辺を巻き込んで高台まちづくりの検討を進めることができないか調整している」(都市計画課)と現状を話す。

 足立区では、都立中川公園、本木・関原地区、小台・宮城地区、新田地区の4カ所をモデル検討候補地と設定。

 このうち新田地区には、建て替え候補となっている都営住宅があることから、高台化と合わせ、地区内にある国の河川防災ステーションと接続できないか方策を探る。

 7区の中で比べると、荒川の上流部分に位置している板橋と北の2区は、区内に高台のエリアもあることから、速やかな避難が最大の課題だが、住民と避難方策を検討する場が、新型コロナウイルスの影響で十分に開けていない状況だ。

 このうち、北区では、区庁舎の移転が計画されている王子駅周辺のエリアで、この機会を捉えて水害に強いまちづくりを進める考えだ。

特定公益的施設のイメージ

◆国や都も支援策を展開
 水害に強いまちづくりのために何ができるのか、地元区が対策の検討を進める中、これを後押しするため、国交省や都も支援のための制度を準備している。

 国交省は「都市安全確保拠点整備事業」として、大規模水害などの発生時に都市機能の維持や住民の安全を確保する施設整備を交付金で支援する仕組みを設ける。

 都市計画法に基づく都市施設に「一団地の都市安全確保拠点施設」の枠組みを創設する考えで、そのために必要になる流域治水関連法案に含まれる都市計画法の改正などを待って制度化する。

 都も都市開発諸制度を改定し、水害が強く懸念されるエリアを対象に、建築物に一時避難施設を整備した場合などに公共貢献として評価して容積率を緩和する仕組みを新たに設けた。

3月30日の高台まちづくり 推進方策検討WG初会合


 WGの次回開催時期については決まっていない。「各区の検討の進捗を見ながら、タイミングを見て情報共有ができれば。第1回はそのキックオフとしての意味合いもある」(東京都都市整備局)と話す。



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